ファム・ファタル【試し読み】
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何度か波が押し寄せた。けれど決定打を与えないままに刺激が弱まり、無理矢理になだめられ、掴み取ろうとした絶頂を、何度も躱された。
楽になりたいと、思い始めた。
いい加減、耐える腰も、開かされた足も苦痛になってきている。
「もう、やめてくれ……からだが、溶け、る…」
「蕩けるほどに良いんですね」
ちがう、とも、そうだ、とも即答はできない。ただ身体の中心が溶けそうで「そうだ」と返す。
「私も早く、貴方の中に入りたい」
玉藻の声が掠れているのに気付いて、改めて彼の欲情を知った。
「なんでもいいから、……早く、来い」
鵺野は絶対に言わないと思っていた言葉を、気がついたら言っていた。「…さっさと、終わらせちまえ」悔しさと気持ちよさが混線した末の言葉だった。
玉藻は「触ってみて」と言い、鵺野の手首を掴んで何かを無理に触らせる。
「……な、んだ…お前、そんなもん、そんな…!」
作品名:ファム・ファタル【試し読み】 作家名:さねかずら