写真
大胆な素振りは、恥ずかしさを隠す手段だ。プロイセンがそういう類の人間だと知っているドイツは、離れていく唇を連れ戻そうと、慌てて腰を抱き寄せた。
「……ヴェスト?」
「どうしてそう、兄さんは回りくどいんだ!」
頬が熱い。ドイツは自分がとんでもない顔をしている自覚を持ちながら、プロイセンをきつく抱き寄せようとして、ほとんど同時に聞こえた携帯カメラの撮影音に、ぴたと止まった。
「っしゃ、可愛いヴェストの写真、ゲットだぜ!」
「まっ、兄さん!」
「なんだよ、消さねぇからな」
「そうじゃない」
がっちりとプロイセンの腰をホールドしたまま、ドイツはゆっくり思考を整理した。
「ヴェスト?」
「……なんでも、ない」
自分は弄ばれているのだろうかと、ドイツは考える。プロイセンは、どこまで本当で、どこまで嘘なのかが不明瞭だ。嘘かと思えば真実で、真実かと思えば冗談であったりする。
「なんだよ、怒ったのか?嘘は、ついてねえぞ」
「いや、そうじゃない」
ドイツは見上げてくる掴み所の無いプロイセンをじっと見つめてから、自然な笑みを漏らした。突拍子の無い行動に、いつも振り回されているが、そんな兄に振り回されることを、ドイツは楽しんでいる。
「笑えるじゃねえか」
「楽しいことがあったからな」
「そりゃけっこう」
「いいのか?写真は」
「それより、もっと楽しいこと、しようぜ、ヴェスト」
「まだ明るいぞ」
「構いやしねえよ」
ドイツは溜息を漏らしたが、兄の提案を拒否しようとは思わなかった。抱き寄せた股間のあたりはすっかり熱を持ち、間違いなくプロイセンへも伝わっていた。
明るい内から散々求め合い、ぐちゃぐちゃなシーツの上に寝そべりながら、ドイツは穏やかに上下するプロイセンの白い肩口を見ていた。
日は翳ってきているが、まだ外は十分明るい。
今日しようと思っていた予定がことごとく崩れてしまい、息を漏らした。愛犬達の散歩にもいかなければならないし、夕食の買出しもこれからしなければならない。
だが、体は甘い疲労に犯されていて、すぐに起き上がる気にはなれなかった。爛れた生活だと思うが、責任はドイツにもある。
起き上がろうか、もう少しこのままプロイセンと同じベッドで寝転がっているかをドイツが迷っていると、鈍い携帯の着信音が響いた。