写真
聞き覚えのあるメロディに、ドイツは慌てて起き上がり、ベッドの下に脱ぎ散らかしている服の中から携帯電話を取り出し、すぐに着信音を停止させた。
出来れば、気持ち良さそうに寝ているプロイセンを起こしたくない。本来眠る時間帯ではないが、さっきまであれだけ乱れたのだから、体力を消耗しているはずだ。
誘ったのはプロイセンだが、無理をさせたのはドイツだ。挑発されると、どうしても抑えが利かなくなってしまう。
だが、流石に音に気付き、プロイセンは薄っすらと赤い目を開いた。
「ん、……ぁ? なんだ、あ?」
「悪い。なんでもない」
「電話か?」
「いや、イタリアからメールだ」
「イタちゃんからかあ、なんだって?」
プロイセンは眠そうに間延びした声を漏らし、すぐに目を閉じてしまった。
「靴紐が結べたそうだ。と、写真が添付されている。見るか? 下手だぞ」
「相変わらず可愛いなあ、おう、見る見る」
だがプロイセンは起き上がろうとも、目を開こうともしない。半分寝ているような状態だ。
イタリアからの写真は、確かに靴紐を結んだ靴が写されているが、お世辞にも上手とは言えないものだった。メールの文章と写真を確認してそのまま閉じようとしたのだが、ドイツはふとプロイセンの寝そべる姿を見下ろし、携帯を持つ手を詰まらせた。
穏やかそうにしているが、散々泣かせた目元は色づき、涙が乾いた跡が残っている。髪はドイツがいつものように掻き混ぜたため、乱れたままだ。
「…………」
ドイツは黙ったまま、携帯の画面にプロイセンを写した。絵心の無さは自覚している。セックスに疲れきった気だるい寝顔を長方形の枠に収め、そっとボタンを押す。
カシャ、という初期設定のままのシャッター音が、静かな部屋に響いた。
「っ……な、なんだあ?」
音に驚いて目を開いたプロイセンは、ドイツの持つ携帯が自分の方へ向けられていることと、今聞こえた音が繋がり、ぶるぶると肩を震わせた。
「な、なに、してんだっ」
「写真を撮っただけだが」
真っ赤になったプロイセンは、携帯を奪おうとしたが、ドイツに敵うはずもなく、あっさりベッドに押さえ込まれた。
体重を掛けながら胸を押しつぶし、どちらが優勢であるかを知らしめると、プロイセンは早速不貞腐れた。
「くそ、重いっ、どけよっ、ヴェストっ」
「暴れるからだ」