写真
跳ねる体を押さえ込むのは、愉悦感がある。否定は出来ない。
「っぅ、変な写真を、撮るからだろっ」
「写真を撮られるのは好きだったはずだ」
「そ、そりゃあ、カッコイイ俺様の写真ならいいが、今のは、駄目だ」
「なぜ?」
「だめなもんは、だめだ!」
「なかなか、良く撮れた」
「すぐ消せ」
「嫌だ。俺も、兄さんの写真が欲しい」
「駄目なもんは、駄目だって」
「じゃあ、さっき撮った俺の写真も消してくれ。そうしたら相子だ」
「う……」
プロイセンは言葉を詰まらせ、首を押し倒されたまま竦めた。
「それも、いやだ……」
子供のような返しに、ドイツは不覚にもときめいてしまった。自分の写真を消したくないと言われて、たとえその写真がドイツにとって恥ずかしいものであっても、悪い気はしない。
「兄さん」
「……俺の写真が欲しいなら、もっと別ん時に撮らせてやる」
「そんなんじゃ、意味が無い」
「趣味悪いぞ、お前」
「兄さんもだ」
互いに引かないやり取りに、ほとんど同時に二人は笑った。
「誰にも見せない。約束する」
「あたりまえだ。ああいうお前の顔は、俺だけが知ってればいいんだよ」
偉そうに言い放たれた言葉に、ドイツはまたしても、胸をときめかせた。
「……どうした? ヴェスト」
「いいや、なんでもない。もう夕刻だ。シャワーを浴びてくれ」
「お前は?」
「俺は後でいい。散歩をしてこないとな」
「俺も行く」
「一緒に?」
ドイツは押さえていた手を離し、プロイセンへ圧し掛かった体を起こした。
「当たり前だろ」
「……体は、大丈夫なのか?」
乱暴にしたつもりはないが、体は相当辛いはずだ。散歩とはいえ、そこそこの運動量にはなる。
からかいたいという他意は無かったのだが、プロイセンはふいっと顔を逸らしてしまった。
「兄さん?」
仕草を見てから、自分がプロイセンの羞恥心を刺激することを言ってしまったのだと、ドイツは気付いた。
本当に、この兄は、可愛い。
「くそ、ヴェストのくせに」
「拗ねないでくれ」
「ばあか、そんなんじゃねえよ」
「じゃあ、機嫌を直してくれ」
「同じことだ」
「俺はどうすればいい?」
「……自分で考えろ、そのくらい」
ベッドから起き上がり、そのまま降りていってしまうプロイセンを追うタイミングを、ドイツは逃した。
「兄さん」
「笑え」