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魅惑の彼氏。

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 新宿を拠点に活動する情報屋、折原臨也には、いくつかの楽しみがある。
 そのひとつが、クラブめぐりだ。
 酷く気分がいい日──例えば長年の宿敵といっても過言ではない、池袋の喧嘩人形こと平和島静雄への、すでにライフワークの一部と化した多彩な嫌がらせがこれ以上はないというほどうまくいった日など──に、折原臨也の中の悪い虫は騒ぎ出す。
 おおよそ月に一度くらいの頻度で、割合定期的に臨也の趣味の悪い遊びが始まる。
 遊びはだいたい、日が落ちてネオン街が目に悪そうな色であふれかえる頃合から始まり、そして臨也が飽きるまで続く。飽きるまでの時間は日によってまちまちで、それでも大概は日を跨ぐまで終わらない。終わったあとはそのとき一番近い塒に帰ってそのまま朝を迎える。
 今日も、ちょうどそんな遊びを楽しんだ。
 本日<標的>に選んだ店は、近辺では割と有名な高級店で、けれども情報屋として日々暗躍している臨也にとっては大金を積んで朝まで貸しきりにするなど造作もないことだったから、いつものようにトランクいっぱいの札束を持って、高級ホストクラブへと足を運んだ。
 プライドの高いホストたちへの嫌がらせを楽しむ遊びとはいえ、勿論酒を飲むのも目的ではある。正直なところ臨也はあまり酒には強くなく、だからほとんど最後はこどものような嫌がらせで終わる。酔っ払いの絡み酒ほど鬱陶しいものはないので、もはやそれも楽しみの一部のような気もするのだが。
 そんなことばかり繰り返しているせいで、最近では手配書のようなものが回っているようだ。とはいえ臨也には全てお見通し。そんなことは百も承知なので、今日はばっちり女装して出かけた。
 何事にも凝り性な臨也は、一日限定の変装でも、雑誌やネットなどで女装やメイクの情報をしっかりと調べあげる。その成果か、目的の店に辿りつくまでに何度も客引きとナンパに足を止められた。
 ホストクラブでも、女装は効果アリ、だった。売り上げ上位のホストたちが入れ代わり立ち代わり臨也の席にやってきてはサービスに励む姿は、折原臨也の趣味がたとえ人間観察ではなかったとしても、充分に面白くみえたことだろう。
 ゆるくウェーブした黒髪、長い睫、つややかなくちびる、華奢な印象の白いチュニックからしなやかに伸びる腕と、夏らしいインド綿のワンピースからのぞく細い足首。
 何処からどう見てもかわいらしい女子大生だ。さりげなく高級品のアクセを絡め、お嬢様アピールもしっかりと忘れない。歩き方や立ち居振る舞いなど、臨也からすればたいした壁でもないのだ。
 いつもは客を手玉にとっているだろうホストたちを、鼻歌交じりに傅かせ、高笑いしながらドンペリでシャンパンタワーをつくらせたところまでは、はっきり覚えている。



 
作品名:魅惑の彼氏。 作家名:藤枝 鉄