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カテリーナ

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10.

暗い暗い世界で、女の人の泣いている声が聞こえる。

「ねえ、どうして泣いてるの?」

僕が話しかけると、綺麗な女の人は涙を流して笑った。
まるで、この世の人には思えないほど、美しかった。

「さよなら。」

目の前に赤が広がる。
女の人は、その場にばたりと崩れ落ちた。
その光景は恐ろしいくらい、美しかった。

ハッと目を覚ますと、またか、と呟いた。
汗でぐっしょりしたパジャマが、鬱陶しい。
僕はまだ、忘れることができない。
あの光景も、母の泣いている声も。

父が亡くなって、僕は今までより一生懸命勉強に励んだ。
飛び級が奨励されていた学校だったから、他の人より早く進級した。
早く、早く。早く大人にならなくちゃ。
姉さんとナターリヤを守らなくちゃ。
僕が、僕が。

姉さんはいつも笑っていた。
「イヴァンちゃんは好きなように勉強して、自分のしたいことをしてね。」
僕のために働いて、僕のために自分を鎖につないだ。
自分のことはいいから、と僕を優先させた。
ナターリヤは僕を愛していた。
私が兄さんを守るから。私が兄さんの傍にいるから。
彼女は、自分の心を失ってしまった。

どうして二人とも僕を優先するの?
どうして二人とも自分のために生きないの?
どうして。どうして。どうして。
僕たちはとても愚かだ。
お互いの傷を舐めあって、思いやることで自己満足して。
好きだから。家族だから。
自分よりも、イヴァンちゃんを。
自分よりも、兄さんを。
そんなのちっとも嬉しくないよ!
でも、二人にそれを言えない僕が一番愚かだった。
姉さんとナターリヤの優しさに甘えて。
愛を、もらうだけの存在。

僕はただ、姉さんとナターリヤに、好きなように生きて欲しいだけなのに。
自分の道を、歩いて欲しいだけなのに。

作品名:カテリーナ 作家名:ずーか