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Blessing you(英米/R15)

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アメリカが昼寝から目覚めた後、幾度となくイギリスはアメリカに言おうとした。
だがそのたびにひどい吐き気に見舞われ、挙句の果てにそのままトイレに駆け込み
戻してしまうことすらあった。
イギリスは身体だけではなく、心もずたずたに引き裂かれていた。
何度挑戦しようともおめでとうすら言えない自分。
そんな自分に嫌気が差して、いつしかアメリカを真っ直ぐに見ることすら
苦痛になっていた。
そうして3日は終わり、7月4日の朝。
限界を迎えていたイギリスの状態を見抜いたのはやはりフランスでアメリカと
出かけてきますと言ったのはカナダだった。
昼ご飯まで出かけてきますので、お二人は休んでいて下さい。
アメリカはイギリスと居たいと言うのかとイギリス以外の三人は思ったのだが
アメリカは我儘を言うことも無く黙って二人に連れられて買い物に出掛けて行った。
そして今、この屋敷にはイギリスと日本しかいない。
「・・・あいつらに気を使わせちまったな」
「気になりますか?」
「・・・カナダだけな。フランスはいいんだよ。あいつは別だ」
「仲がよろしいのですね」
「ちが・・・!・・・なあ、日本」
声を上げかけたイギリスはトーンを落として日本を呼ぶ。
はい、と返事を返すとイギリスは言いにくそうに口を開いた。
「俺、アメリカを許せねぇんだ。二百数十年も経っていて付き合っているのに許せない。
 駄目なんだよ。俺は・・・裏切られるのが、怖い」
零れ落ちた言葉に重さがあるのならば地面に沈んでしまいそうなほど
イギリスの言葉には重みがあった。
自分でも重いなとイギリスは思ったが日本は茶化すことも無く
至って真面目に話を聞く態度を取っていたので、手ずから淹れた紅茶を
一口飲み話を続ける。
「あいつと恋人になってからも変わらなかった。あいつにいつか裏切られるんじゃないかと
 俺は怯えながら付き合い続けた。けど、あいつはそんな気持ちわかっていたんだろうな。
 数年前、俺に約束をくれたんだ」

『俺はね、イギリス。キミと二度と離れる気はないんだ。何があろうと、そうだね
 死が二人を分かつことがあろうと離れないることはないよ』
『好きだ。愛しているよイギリス。キミを二度と離したりするもんか』

「幸せだった。何よりも自由を愛し、俺から独立したアメリカが離れないって
 言ってくれたんだ。涙するほど俺は嬉しかった」
日本は相槌を打つだけに留めて、イギリスの話に耳を傾け続ける。
「そんなに幸せだったのに、言葉を貰ったその年も俺は体調を崩した。愕然とした。
 俺は約束を貰ってもアメリカを許すことができないのだと」
組んだ手に額を押しあてて言葉を吐きす。
「許す、許さないの問題ではないのかもしれない。だが現実、俺は許していない。
 記念日を祝うことが出来ない」
「・・・大変不躾なことをお伺いします。イギリスさんが一番恐れて
 いらっしゃることは何ですか?」
それまで黙ってイギリスの話を聞いていた日本が口を開く。
唐突な問いにイギリスは目を瞬かせ、鸚鵡返しする。
「恐れていること?」
「そうです。イギリスさんがアメリカさんとの関係の中で一番恐れていることです」
「そんなの裏切られることに決まっている。あんなふうに裏切られたら
 俺はもう二度と立ち上がれない。裏切って、離れられるのは嫌だ」
「裏切りを恐れているのは気持ちを裏切られたからですか?」
(それも辛かった。けど俺が一番辛かったのは)
は、と気づいて日本を見返す。
漆黒の瞳は揺らぐことなく静かにイギリスを見つめている。
日本は恐らくイギリスの気持ちを整理させようとしてあの質問を投げかけたのだ。
あの日のことに背を向けているイギリスが向き合えるようにと話の方向を向けている。
日本がそう口にしたわけではなかったが、イギリスにはそう思えてならなかった。
「イギリスさん。私は今から酷いことを言います」
穏やかな口調に潜む鋭い刃にイギリスは身構える。
イギリスと付き合いのある数少ない国の中でも日本は穏やかな気質の持ち主で
空気を読むスキルに長けていることから、人を傷つける発言はほとんどしたことがない。
その日本がわざわざ酷いことを言うと宣言したのだ。
余程のことに違いない。
「私たちは『国』です。裏切ったことも裏切られたこともたくさんあります」
望む望まないとは別に裏切り、裏切られここまで歩んできた。
そのことは否定できない。
むしろ策謀を好み、二枚舌外交を駆使してきたイギリスはその最たるともいえた。
「では何故、アメリカさんの裏切りだけが許せなかったのですか?」
「それは・・・」
「恩を仇で返されたからですか?好意を踏みにじられたからですか?」
「・・・・・・そうだ。俺は」
お前の言ったそれらが許せなかったんだ、と言葉を続けようとしてイギリスは言い淀んだ。
本当にそうなのだろうか。
恩を仇で返されたから、好意を踏みにじられたからアメリカを許せなかった。
これは正しくイギリスの気持ちだ。
間違っていない。それが許せなかった。
作品名:Blessing you(英米/R15) 作家名:ぽんたろう