Blessing you(英米/R15)
Blessing you 05
5人そろってのブランチの後、イギリスはアメリカと二人で庭で遊んでいた。
本当はスコーンを作ろうとしたのだが、日本に必死の形相で
「イギリスさんはまだ本調子ではないでしょうからアメリカさんと遊んでいて下さい!」
と押し切られてしまったのである。
イギリスも別に平気だ。スコーンぐらい作れると主張したのだが
あまりにも日本が必死だったので強く言うことが出来ず、イギリスの膝上に座っていた
アメリカが外で遊びたいと言いだしたので庭に二人で遊びに行くことにした。
アメリカの別宅の庭はあまり手入れがされていないらしく、草がのびのびと生息している。
藤で編まれた椅子に腰かけたイギリスはぼうっとはしゃぐアメリカを眺めた。
アメリカは広い庭を駆け回ったり、しゃがみこんで蟻の行列を眺めたりして
思う存分楽しんでいる。
アメリカは本当に可愛くて愛しい。
夢のような光景にイギリスの心は弾み、癒されていく。
この光景がずっと続けばいい、愛しいこの子がいれば他に何もいらないと
思った時期もあったのに。
(我儘でどうしようもないあいつが恋しいなんてな)
思わず自嘲気味た笑いが零れる。
あまりにも身勝手な想いではないか。
昔はあんなに可愛かったのになとアメリカに愚痴る癖に、いざ昔のアメリカが現れると
今のアメリカが恋しくなる。
こんなどうしようもない男に愛されたアメリカは可哀想だなと思うものの
本気にさせたあいつが悪いんだと責任を投げつけ、イギリスは椅子から立ち上がった。
「いぎりちゅ、帰るの?」
俺、まだ遊びたいと見上げるアメリカの頭を撫でて違うよと笑う。
イギリスが向かったのは庭の片隅にあるシロツメグサの群生地だ。
座りこんで長めのものを2本とる。
興味深げに覗きこんでくるアメリカに見やすいように手元を動かしながら
シロツメグサの花冠を編んでいく。
十分をしないうちに立派なシロツメグサの花冠は完成し、それをイギリスは
アメリカの頭に載せた。
「・・・おめでとう、アメリカ」
込み上げてくる感情そのままにイギリスはアメリカに祝福の言葉を告げる。
祝福の言葉を言うのにも眩暈、吐き気が込み上げ、アメリカを見ることが苦痛になる。
それでもイギリスは青白い顔を晒しながらも淡く笑う。
足りないのならば何度もでも告げよう。自分はどうなってもいい。
アメリカが元の姿に戻れるのならば、これぐらいの苦痛はどうってことない。
「―――――いいよ」
小さな声でアメリカが呟いた。
え、と首をかしげるイギリスは次の瞬間、言葉を失った。
オーシャンブルーの瞳が水に濡れ、今にも零れ落ちそうになっている。
「もういいよ。俺、このままでいい」
「アメリカ?」
絞り出すように名前を呼ぶと膝上に座り込んだアメリカが胸に顔を埋めた。
その小さな身体を震わせるたびに胸元のシャツが湿り気を帯びていく。
こわごわとアメリカを抱きしめると一層濡れていくのがわかった。
「イギリスが苦しいのはやだ。だからおめでとうって言わないで」
泣き濡れた声で嘆願され、言葉に詰まる。
(そうだ。忘れていた)
アメリカの可愛らしさに気を取られ忘れていたが、アメリカは元々とても聡い子だ。
イギリスがおめでとうという理由がわからなくても、おめでとうということで
具合が悪くなることに気づいたに違いない。
だからもう言わないでとアメリカは嘆願したのだ。
全ては、イギリスの苦しむところを見たくないために。
「ごめんなアメリカ。・・・・・・おめでとう、おめでとう」
「やだ、やだよイギリス!そんなのちっとも嬉しくない!」
泣きじゃくるアメリカを抱きしめて、自らも涙を流しながらイギリスは囁く。
重ねられた言葉がいつしか降り積もって魔法が解ければいい。
そう思いながらイギリスは途切れることのない祝福の言葉を囁き続けた。
作品名:Blessing you(英米/R15) 作家名:ぽんたろう