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Blessing you(英米/R15)

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「だから、あーわかったよ。お兄さんが悪いってことで良いです。で、話の続きだけど。
 予定時間になってもあいつが帰ってこなかったらしくて、カナダに電話を
 かけてきたんだよ。それから2時間くらい経ってかな。もう一度、電話が
 かかってきたんだ。アメリカはどんな経路で帰ったのか確認のためにね。
 カナダは首をかしげながらも答えたよ。車で帰ったとね。
 それからそのまま電話を繋ぎっぱなしにして10分ぐらい経ってからかな。
向こうから返答があった。アメリカが国境を越えてしばらくして消息を絶ったと」
「どういう意味だよ・・・」
張り詰めた硬い声がイギリスから上がった。
「最初は軽い気持ちで単にアメリカは遊んでいるんだろうと政府の奴らも思っていた。
 だが、この大事な時期にいくらアメリカでも連絡も無しで遅れることなんてありえない。
 そこであいつの時計に仕込んであるGPSを使って位置を探索しようとしたんだが
 探索できなかった。大混乱だ。当たり前だな。この地球上で探索できないところは
ないという最新鋭のGPSが反応しないんだ。当然、アメリカに何かあったのでは
 ないかということになってお前にまで連絡がいったわけ」
「・・・今も連絡はないのか?」
「連絡なし。反応なし。今のところ、お手上げだな」
張り詰めた場の緊張を解すようにフランスはわざとおどけて言ったが
それはまったく無駄な努力でしかなかった。
反応さえ返さなかったイギリスは指先で太ももを叩いている。
これは余裕がないときに見せるイギリスの癖だ。
本当に余裕がないのだろう。
前を見据えているはずの視線は時折揺らぎ、真っ直ぐに伸ばしている背筋も
今日ばかりは少し丸まっている。
こんなにも弱ったイギリスを見るのは独立直後以来だった。
(まいったもんだね・・・)
あの頃も今もどう接したらいいのかわからない。
慰めるなんて選択肢にない。
トドメを刺す?いや、イギリスとの決着をつけるのはこのような時ではない。
躊躇いは一瞬だった。
第三の選択肢。
あのときには選べなかった選択肢。
今なら選ぶことが出来る。
自分もイギリスも変わった今なら。
「大英帝国ともあろう方が諦めてるの?」
「ぶっ殺すぞ髭」
車に乗ってから初めてイギリスの視線がフランスに向けられた。
エメラルドの瞳はこれほどまでに弱っていても輝きは薄れない。
ぞくりと背筋を駆け上がるものに口唇を舐め、イギリスを見返す。
「おーこわ。元気じゃないの」
「テメェがふざけたこと抜かすからだ」
「だって一瞬諦めだろ。アメリカのこと」
ガッ
目の前に本当に星が見えた。
先ほどとは比べ物にならないほど本気の力でイギリスは片手だけでフランスを
締め上げにかかっている。
ここが車の中でなければ、とっくにフランスの頭は地面とキスをしていたであろう。
否、そもそもそんなまどろっこしい真似をイギリスはしない。
彼の愛用のワルサーPPKを威嚇射撃無しでフランスにぶっ放す。
それがフランスの知っているイギリスという男だ。
「諦めねぇよ」
天国まで見えかけてようやく解放され、勢いよく咳込むフランスに目もくれず
イギリスは目を伏せた。
「俺は例えアメリカがこの地球上にいなくても、生きている可能性があれば
 いや、あいつの遺体を確認するまでは死んだなんて思わないし諦めもしねぇよ」
「立っているのも難しいほどフラフラなのによく言うな」
「大英帝国舐めんじゃねぇぞ」
現役時代を彷彿とさせるあくどい笑みを浮かべたイギリスはどうやら気分を
持ち直したようだ。
(慣れないことなんてするもんじゃないね)
「あーあ。お兄さん、ホント良い人」
「は?何言ってんだよ髭」
「感謝しろよイギリス。お兄さんが良い人で良かったって」
にやりと皮肉気に笑うとイギリスは立派な眉を顰めた。
だが言い返すことはせずに近づいてくるホワイトハウスにまるで敵を
見据えるかのような眼差しを向ける。
既に意識は愛しきアメリカの元に飛んでいるに違いない。
(比喩抜きで飛んでいきそうなところが怖いよな)
想像して堪え切れなかった笑みは幸いにもイギリスに気づかれることなく処理される。
一しきり腹の中で笑ったフランスは気持ちを切り替え、一人ホワイトハウスで
待っているカナダに想いを馳せた。
カナダも言葉にはしないが、兄弟が行方知れずになっていることに相当なストレスを
感じているはずだ。
そしてこちらに向かっている日本も気を揉んでいるに違いない。
(早く帰ってきなアメリカ。お前を心配している奴はお前が思っているよりも
 ずっとたくさんいるんだよ)
残念ながら俺もお前の安否を心配しているんだ。
そう呟いてフランスはどこにいるともしれないアメリカの無事をそっと祈った。
作品名:Blessing you(英米/R15) 作家名:ぽんたろう