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Blessing you(英米/R15)

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まるで海の底から浮かび上がってくるように意識が浮上する。
窓からは薄く陽が差し込んでおり、手元の時計を確認すると4時間ばかり
眠っていたようだ。
身体を起こすとひどかった頭痛は治まっており、焼けつくような吐き気も無い。
さすがに通常通りとはいかないがこの時期にしてはかなり具合が良くなっていた。
動くのに支障が無ければ躊躇いなどない。
ゆっくりとベッドから降りたイギリスは執務室へのドアを開く。
「イギリスさん。お久しぶりです」
「日本。もう着いたのか」
扉の向こうにはカナダとフランスと着いたばかりであろう日本の三人が待ち構えていた。
三人とも顔色が酷くむしろ今の時点ではイギリスが一番顔色が良かった。
イギリスに向けてふわりと笑みを浮かべていた日本だったが、すぐに顔を引き締める。
「アメリカさんの存在を確認できなくなったと聞いてすぐにこちらへ向かいました。
 私にできることはありませんが、居ても立ってもいられなくなってしまいまして」
「そんなことないよ日本。こいつ、日本がこっちに来るって聞いて
 すごい安心した顔したもん」
「髭の言うことに同意するのは癪だが、俺はお前が来てくれてよかったよ」
「僕もです。それにアメリカの為にわざわざ駆けつけてくれたってアメリカが知ったら
 すごく喜びますよ」
三人三様の言葉に日本はありがとうございますと返した。
日本の頬は仄かに赤く染まっていて、それに気づいたフランスがにやにやと笑ったが
即座にイギリスがキモイと吐き捨てて地面に沈めたため
日本に気づかれることはなかった。
「それで、アメリカさんは・・・?」
「まだ連絡はない。反応も無い。反政府組織とかマフィアに捕まったわけでもないみたいだ」
「だろうな。今のアメリカをアメリカだとわかるやつはそうそういないだろう」
「どういう意味ですか?」
訳知り顔でフランスの言葉に頷いたイギリスにカナダが問いかける。
「言葉の通りだ。あいつは今、妖精の魔法に縛られている」
「・・・あのさぁ坊ちゃん。今は冗談を言っている場合じゃないでしょ」
がっくりと肩を落としたフランスが無理やり絞り出したような声を上げた。
すぐさま「冗談なんかじゃねーよ」と返すが、日本にまで「ええと、イギリスさん。
今はその・・・」と言われてしまい、ぐっと口唇を噛みしめる。
冗談などではないのだ。
こうして無為に時を過ごしている今もアメリカはあの丸太小屋で泣いている。
寂しい、寂しい、イギリスと。
泣いているあの子を抱きしめたい。
埋めることのできなかった歪な穴を塞いでしまいたい。
そう考えてしまえば、いてもたってもいられなくなった。
冗談と思われるならばそれでいい。
だが実際にイギリスはアメリカがピクシーの魔法によって幼い頃のアメリカに
変化させられる場面を見た。
見たのは夢の中だったが、あれは実際に起きたことだ。
あのとき抱きしめてやれなかったアメリカを抱きしめてやりたい。
皆が信じないのならば、一人で行くまでだ。
焦燥感が込み上げてくるのをぐっと堪えてイギリスは三人の横を通り抜けようとした。
足早に通り過ぎようとするイギリスの腕をカナダが掴んだ。
「待って下さいイギリスさん」
「お前らはここで待ってろ。俺は一人で迎えに行く」
「嫌です。僕も一緒に行きます」
腕をしっかりと掴んだカナダは真剣な面持ちでイギリスに訴えた。
そこにはフランスのような嘲りも日本のような戸惑いも無い。
ただ真っ直ぐにイギリスを信じている。
まるでアメリカのような視線の強さにイギリスはたじろいだ。
作品名:Blessing you(英米/R15) 作家名:ぽんたろう