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Blessing you(英米/R15)

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「アメリカは魔法に縛られているんですよね?どういう魔法なんですか?」
「・・・あいつ、ピクシーを怒らせちまったんだ。それで小さくなる魔法をかけられた」
「小さくなる・・・ですか?スモールライトのようなものでしょうか?」
「スモールライト?」
聞き慣れない単語にイギリスは眉を顰めた。
逆にフランスは「あーあれね」と頷いている。
カナダは首をかしげているから日本とフランスにしかわからない単語なのだろう。
気になるなと日本に視線を向けると日本は曖昧な笑みを浮かべた。
「あ、いえ、気になさらないでください。それでイギリスさん、アメリカさんは・・・?」
あいつは。
言いかけてイギリスは口籠る。
夢の中の短い逢瀬から推察するに、アメリカは出会って数年もしない頃まで
時が戻ったように見えた。
彼がいぎりちゅと舌足らずに呼んでいたのは出会ってから数年の間だけで
その数年の間にも土地が発達し国民が増えていくにつれて、どんどんアメリカは
語彙を増やしていった。
それでもいぎりちゅという口調はなかなか抜けなくて、内容は割合知的だというのに
呼び名だけはいぎりちゅと呼ぶおかげでイギリスに移行するまでの移行期に
イギリスは何度笑いを堪えたことか。
記憶の中の幼子がいぎりちゅと呼んだような気がしてイギリスはうっかり頬を
緩めそうになってしまった。
「あの、」
「無駄無駄日本。完璧にいってるよアレは」
「完璧にいっているとは何だ。クソ髭」
フランスを軽く睨んで、ごまかすようにごほんと咳をしてイギリスは頭の中をクリアにする。
そうして口を開いた。
「俺の記憶が確かならあれは俺と出会ったばかりのアメリカだと思う」
「アメリカの背がそこまで縮んだのか?」
怪訝そうに問うフランスにイギリスは頷く。
どのくらいなんですか?と尋ねる日本にカナダが膝くらいだと思いますよと答えると
何たる萌え・・・!と小さく呟いたままイギリスの膝の辺りを凝視する。
え、とイギリスがたじろぐとすぐに日本は視線を外し「何でもありません。私には構わず
お話を続けて下さい」と柔らかく微笑んだ。
イギリスとしては先ほどの呟きの意味を問いたかったが何となしに聞いては
ならぬのではないかと予感が過り、問い返すことはしなかった。
「いや、見た目だけじゃない。おそらくは記憶もその頃のものになっているんだと思う。
 確かかはわからないけどな」
「アメリカが子供の頃まで姿も記憶も戻ってしまったんですよね。ですがアメリカ自体に
 国自体には影響は出ていないみたいです」
フランスと交代でアメリカ国内の状況を把握していたカナダが口を挟む。
「たぶん、あくまでもあいつにしか影響が無いんだと思う。いくら力の強いピクシーでも
 国自体をどうにかする魔法は使えねぇはずだ」
「ということは、個人としてのアメリカさんだけが若返ったというわけですね」
「ああ。それで間違いないはずだ」
一通り話し終えてイギリスは一人きりで丸太小屋にいるであろうアメリカに思いを馳せた。
あの小屋は森の奥深くに作られているとはいえ、近くの街からそう離れていない。
もしもアメリカが外に出て、街に行ってしまったら面倒なことになる。
迷子になるからという理由ではなく、アメリカが発達した街を見た影響が怖かった。
柔らかな土はアスファルトに覆われ、川はフェンスに遮られている。
それに田舎の小さな町とはいえ、車も鉄道もある。
動く乗り物に驚いたアメリカが道路や線路に飛び出したら。
考えるだけで胃がきゅっとなり、背筋が凍る。
「じゃあ早くアメリカのところに行かないとまずいですね。街にでも出たら厄介です」
「そうだね。あいつ、無駄に元気だからありえそうで怖いよ」
イギリスと同じ危惧を抱いたカナダの台詞にフランスが同意する。
すると携帯でどこかに連絡を取っていた日本が話を終えて携帯を内ポケットに仕舞う。
「職員にお願いして車を用意してもらいました。高官通用口の前で待っているそうです」
「すまない日本。助かる」
「いえ、私にできることはこれくらいなので。それよりもここにも連絡係が必要ですね。
 アメリカさんがその丸太小屋に居る確率は高いでしょうが、他の可能性も
 捨てきれません。何かあった時にここを空にしておいてはまずいでしょうし。
 ああ、安心して下さい。ここには私が残ります。イギリスさんと
 カナダさんとフランスさんの三人で行ってきてください」
日本の提案に文句などあるはずもなく、三人はあっさりと提案を受け入れた。
ここホワイトハウスに職員は数多くいるが、国がいるといないでは安心感も
違ってくるだろう。
その点日本はアメリカの友好国の中でも特に仲がいい方で職員に知り合いも多い。
兄弟であるカナダが残らないのであれば、最適の人材だといえる。
「出来る限り早くアメリカさんをお連れになって下さいね。
 私は、英語があまり得意ではないので」
「ああ。アメリカを連れてすぐに戻ってくる」
日本なりの気遣いに少しだけ笑ってイギリスは約束をした。
作品名:Blessing you(英米/R15) 作家名:ぽんたろう