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みとなんこ@紺
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recollection

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時間としてはたいしたことはなかったかもしれないが、当人たちにとってはかなり長い沈黙の後。

「…相棒?」

「!・・・ゴメン・・・ッ」

やっぱり顔は上げられなくて、今の表情を見て欲しくなくて。
振り返られる前にその場から逃げ出して自分の心の部屋に飛び込むと、ベッドにダイブして頭から毛布を被ってしまった。

ああもう、いっそ穴があったら入りたい。

ぐるぐるとする思考を抱えて、遊戯は枕に顔を埋めた。
どうしよう、絶対変だと思われた。
とっさにあの場を逃げ出してきてしまったけれど、立場が逆なら自分も絶対変だと思う。
もう一人の遊戯はしばらく回廊にいたようだけれど、結局部屋には入ってこなかった。自分の心の部屋に帰ったか、それとも表に出てくれたか。
今のところ傍に来る素振りを見せないが、それも時間の問題だ。ただ、落ち着くまで待ってくれてるだけだろうから。
もう一人の遊戯は、喩え何かあったとしても無理に聞き出そうとする事はない。話したいなら話せばいい、そんな踏み込みすぎない距離をよく知ってる。
・・・ホントの所はそれをすこし寂しいと思う時がなくもないけれど、とりあえず今はありがたかった。
・・・が。現在の状況では根本の解決には繋がらない所がミソだけど。・・・つまり、

「・・・何て言ったらいいんだよ~」

もやもやしたこの感情の名前。
思い当たってしまった今となっては、もうなかったことには出来ない。
自分の中にそんな感情があったなんて。その事実に気付いた時点で本当に顔から火を噴くかと思った。
・・・本当に些細な事だったはずなのに。どうしてこんなことを思ったんだろう。
学校からの帰り道。
試験勉強の打ち合わせと称して皆で某ファーストフードになだれ込んで、当然のように脱線した話に花を咲かせて。
途中まではいつも通り。

遊戯はもそり、と起きあがって深い溜め息を付いた。

・・・やっぱり言えない。
皆にヤキモチやいた、なんて。




置き去りにされたもう一人の遊戯はもう一人の遊戯で、突然の状況変化にかなり置いてきぼりにされている。
何が原因でこうなったのかまったく判らない。
ぼんやりと背中の温もりがなくなってしまったのを惜しんでいる場合じゃない、と自分を立て直すまでに珍しいくらいの時間が掛かった。
振り向く前に相棒がダッシュで飛び込んだのは相棒の心の部屋だが、こんな状況になっても扉を閉める気がない辺りさすがだ。
妙な所に関心を向けている辺り、自分も動揺してるんだろう。

中には入らずに部屋を覗き込んでみると、部屋の隅のベッドの上に毛布の山が出来ている。どうやら相棒はあそこらしい。
・・・どうもしばらく動く気がない、とみた。

なら、一旦はそっとしておいた方が良いかもしれない。
とりあえず一度表に行って、身体をどうにかしてこなければ。風邪を引くと相棒も自分も困ることだし。

さて、と意識を外に向けながら、今日一日を回想してみる。
朝、ちょっとばかり危険だったが何とか遅刻は免れ、
眠りそうになってる相棒を起こしながら授業も受けたし、
昼休みも別にいつもと同じだった。
・・・ただ、昼過ぎの時点から微妙に記憶が曖昧だ。どうもその辺りからずっと微睡んでいたらしい。
何かがあったとしたら、そこくらいだが・・・?

つらつらとそんな回想をしながら、もう一人の遊戯は目を開けた。

…出てきて正解だったな。

身体を起こして部屋を一瞥して状況を見るだに、相棒は余程慌てていたらしい。
辛うじて身体はベッドの上ではあったが、スリッパは履いたままだし、誰かが見れば部屋の中でベッドに辿り着く前に倒れたようにしか見えないだろう、これは。
そこまで慌てさせるような事をしたつもりはないのだけれど、原因が自分だ、と思うと何か…くすぐったいような、そんな気がしてくる。もう一人の遊戯は一つ苦笑を浮かべると、ベッドから降りて直前まで相棒が向かっていた机に視線を向けた。
一応テスト勉強のためだろうか。開かれた教科書には見慣れた字で書き込みがされている。
だがそれより、まだ何も書かれていないノートの上にちょん、と乗ったままの携帯に目がいった。

着信アリ、の表示が残っている。
時計を見るとつい先程のことだ。
と、思った途端、にぎやかな着信メロディが流れ出した。
少し昔の映画のテーマ曲。
個別に着メロ設定するなら私はコレね、と指定してきたのは杏子、だ。
これはボクら2人のだからね、ボクが出れない時はヨロシク、と笑った相棒の顔が過ぎる。
掛かってくるのは杏子や城之内などの限られた相手だけだったので、すでに相棒が眠っていたりした時などは時折代わりに出る事もあるのだが。
・・・こーいった場合はありだろうか。
そっとパズルの中の相棒の様子を窺うが、どうやら聞こえていないらしい。
杏子が留守録に入れずにメールにもせずに、間を空けてもう一度かけてきたということは、それなりに大事な用なんだろう。
僅かな躊躇の後、もう一人の遊戯はそっと携帯に手を伸ばした。

「・・・もしもし。…杏子?」





作品名:recollection 作家名:みとなんこ@紺