銀河
「…………」、言い過ぎたのか、アルフレッドは僕がそういうと口をつぐんで黙ってしまった。「機嫌を直してよ。今からとてもいいものを見に行くんだから」、と僕は彼を宥めすかして言う。
吐いた息は白く、僕らの周りにまとわりついてふわふわと浮いていた。「オオロラを知っている?」、と僕は彼に聞く。「今日は生憎出ていないけれどもね、あれはとても綺麗だよ。本当ならそれを見せたかったのだけれど、代わりに今日は、とても星が綺麗な夜だから」、僕は3歩後ろを歩いてくるアルフレッドに言う。「あの星の名前を言える?」、とまっすぐに指を空へ指した。「どれ」、とアルフレッドも同じように上を向く。「わからないよ」。
「あるけど、ないんだ」、と僕は言う。「ひとの名前もかみさまの名前もついてない。…かわいそうだと思う?」
にっこりと微笑むと、アルフレッドはフードを頬へ寄せながら、はあ、とひとつため息をついた、白く息が彼の周りを覆う。「思わない」。
「なぜ?」
「彼らは自分たちに名前があること自体わかっていないから」
「あれに思考、感情やこころはないものね。なるほど、僕も確かにそう思うよ」
「うん、それで君は何がいいたいのさ。もっとわかりやすくたのむよ。イギリスじゃあるまいし、まどろっこしい」
「ごめんごめん、僕が言いたかったのはそういうことだよ。わかっていないから」
「………?」