二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

雪柳

INDEX|4ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 


その頃、学園長の前に光と共に現れた子供がいた。
「何者じゃ」
『我はミモザ。刻の社の主』
「それは近くにある社じゃな。その主がわしになんの用じゃ?」
『お前はお前たちは学園が落ちたことは覚えているな?そして、命を落としたことも』
「ああ」
全て覚えている。だが、気が付いたときには学園の部屋にいた。
『我の社に一人の子供がたどりついた。名を乱太郎といった』
「乱太郎じゃと?」
報告では、は組は乱太郎以外みつかっている。だが、乱太郎だけは見つかったという報告はない。
「乱太郎は生きているのでしょうか?」
『生きているとはいいがたい』
「それは…」
どういう意味なのだろうか。全ての者が今乱太郎の安否を心配している。
『お前たちが生きている、生き返ったのは我の力によるもの。それを強く願ったのは乱太郎。乱太郎一人が生き残りそして我の社にたどりついた。そして、乱太郎は願った。自分はいい。他のものたちを還してくれと』
「なんと…」
 優しいあの子であれば、そう願うであろう。だが。
「乱太郎は…」
『あの子は眠っている。我が社にて傷ついた身体とボロボロになった心を癒すためにな。お前のところの者がそろそろ見つけるであろう』
社の主はそう呟いた。
「あの子はどうなるのじゃ?」
『今世では目覚めるこては叶わぬ。乱太郎は自分と引き換えにここの生徒達の生と敵の殲滅を望んだ。それを叶えるための対価はあれの思い。あやつは言った『皆のいない世界に一人いても意味はない』と』
「…乱太郎」
 優しい子だった。お人好しだった。そして…生に一番拘っていた。
「目覚めさせる方法はないのか?」
『ない。あの子は既に輪廻から離れた。土地に縛られること選んだ。それは変えられぬ運命となってしまった』
「…」
 学園長はなにも言えなかった。
『…誰もがあの子に望みすぎた『生きる』という選択を。あの子の願いは皆で生きること。生きる者が自分だけというのであれば、あの子は…死を選ぶ。乱太郎を生かしたかったのであれば一緒に生きることを選ぶべきだったのだ』
「…そうかもしれませぬな」
 乱太郎が一人で背負ってしまったのは、学園生徒や教師の願い。そんな思いを一人で背負うことなど出来ない。
「我々が間違っていたのですな」
『お前達の選択が間違っていたとは思わない』
 大切な子供達に生きろと願うことは教師であれば誰もが思うことだ。だが、敵の目的が学園殲滅だったことが災いした。残せば、それは遺恨として残り攻めた城が今度は狙われる。
『この時代でなければ、あの子は強く願うこともなかった』
「そうですな」
『我はあの子と眠りにつく。今世ではあの子は眼を覚ますことはない。ただ、あの子と約束した。お前達に問おう。お前達は…あの子と来世で会うことを望むか?』
 ミモザは学園長に問う。
『あの子は願った。皆と会うことを。お前達はどうだ?』
 学園長は、即答した。
「そんなもの決まっておる。乱太郎はわしの学園の生徒じゃ。そして、学園を守った子。会うことを望むに決まっておる」
 学園長の言葉にミモザは頷いた。
『では、約束しよう。来世、お前達はあの子と出会うことを。だが、乱太郎はここの土地神として生きることになる。それは忘れるな』
「わかった。…あの子のことを頼みます」
 深く学園長は腰を折った。
『我はゆく。社にはお前達学園の者以外は乱太郎と縁があるもの以外は入ることは叶わぬ』
「承知した」
 ミモザはそういい、消えていった。
『乱太郎を生かすのならば一緒に生きろ』
 その言葉が耳から離れなかった。
「…すまぬ。乱太郎」
 そうつぶやくしか、学園長には出来なかった。

作品名:雪柳 作家名:とーすい