雪柳
『…お前は』
「あなたは…?」
ミモザが戻った時、まだそこには土井が乱太郎の繭を見つめていた。
『我はここの主。お前は?』
「この子の担任の土井半助です。お名前を聞いても?」
『ミモザ』
「あなたがこの子を?」
『そうだ』
「そうですか…。一つお聞きいたします。この子はもう…?」
『生きてはおる。だが、人としての生は対価として既にない。今世は…眠ったままだ』
「そうですか…」
わかっているかのように、土井は繭に手を伸ばした。
『お主は…わかっているようだな』
その言葉に土井は頷いた。
「この子に我々の生を背負わせたのは間違いでした。背負わせるなら一緒に。同じ刻を生きるべきだったんです。状況がどうであれ、死んだとしても子供たちと一緒にいるべきだった。この子は学園の全てを背負ってここにきてしまった。優しい子が乱太郎が願うことなんてわかっていたのに」
『…ならば、お前達は生きなければいけない。精一杯この時代と今世を。そして死んだのならば乱太郎は笑ってくれるだろう』
「…そう願います」
『先ほど、お前たちの学園の長にあってきた。そして、約束した』
「約束?」
『来世でお前達は乱太郎と出会うであろう。記憶を戻すことも可能だ。だが、それは願ったものだけだが。お前達と乱太郎を来世で会わせるそれが『約束』…盟約だ』
笑うミモザ。
「…会えるのであれば、そう願います。そして、謝りたい。乱太郎に」
一人にしたことを。一緒に生きることが出来なかったことを。
『承知した。…我も眠りにつく』
ミモザの姿が消え、乱太郎が入った繭に光が満ちた。
「ゆっくり、お休み」
それは今世での永遠の眠り。