そういうわけなので彼女にはさわらないでいただきたい。
2
正直どうしたら良いか、迷った。
情報屋である臨也の耳にある噂が入った時のことだ。
池袋の自動喧嘩人形に、ストーカーしている命知らずがいる。
最初に知った時は思わず声を出して笑ってしまったけれど、考えてみれば性格と性質に多少難ありとはいえ、あれでいて静緒はかわいらしい顔をしている、よってあり得ない話じゃあない。
まあ噂が広がれば本人の耳にも入るだろうし、そうなればそいつの命はないだろうから心配はしなくて良い。
何を心配するのかと聞かれれば困るけれども。
そういう訳なのだが、やっぱり気に食わない。
そして臨也はその理由を理解していた。悔しいことに。
(てかストーカー被害に気付くのが本人より前に周りってどういうこと)
警戒心が強い癖に、無頓着すぎる。馬鹿じゃないの一回痛い目にあうべきだよね。
そうやってぶすぶすと胸中で文句をつけながら、心配とかじゃないバカにしてるだけだしとか言いながら、
―――気付いたら静緒のアパートの近くに来ていた。
(馬鹿は俺だったー…)
作品名:そういうわけなので彼女にはさわらないでいただきたい。 作家名:佐藤