そういうわけなので彼女にはさわらないでいただきたい。
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結果を言えば、開けて良かった。だった。
靴を脱ぐのも乱暴に部屋に突入する。なんだか甘い香りがする部屋は暗い。
ひょっとして疲れてそのまま眠ってしまったのだろうか。昔から妙にずぼらな所があったし、そうかもしれない。
ずんずん進むと狭い部屋はすぐ突き当たりだ。
季節に合わせたのか、明るいパステルカラーのシーツを被せたベッドの上に、静緒が眠っている。
そしてその上にまたがるように乗っている男。
目が合った。
酷く狼狽した男の手は静緒の膝に掛かっている。見れば胸元もがっつり開かれているし、暗がりでもわかる位、眠るその静緒の顔は赤らんでいる。
そしてその、眠ったままのやわらかで甘ったるい声で「ん、」なんて喘いでみせて。
「ん、や……、ざやぁ」
よし殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
それが静緒の口癖である事には気付かず、臨也は小さな声で繰り返していた。
話は後だ。とりあえず殺す。骨も残さず殺す。
そうしてようやく――――冒頭に戻る。
作品名:そういうわけなので彼女にはさわらないでいただきたい。 作家名:佐藤