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そういうわけなので彼女にはさわらないでいただきたい。

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静緒を見下ろす臨也の顔は、酷く冷たかった。下から冷酷な奴だけど、こんな顔久しぶりにみた。


「シズちゃん」
片手に男をぶら下げたまま、臨也は冷凍されてるみたいな声をだした。
「…は、はい」
「胸、閉まっときな」


びっくりして見下ろしたら、シャツの前が思いっきり開いていた。ブラもしっかり上げられている。

「え、ええっ!?」

だって知らない人がいる前だ。
なにがどうしてこうなった。
思いっきり混乱しながら静緒は慌てて服を整えた。そうしながら横目でちらりと男を見る。
誰だろう、どっかで見たことあるような、ないような。


「一応聞くけどシズちゃん」
「な、んだよ」
「コレ、彼氏?」

コレ、と言いながら臨也は男の襟首をぶら下げたまま乱暴に振るう。
力なくうなだれた男の頭がおもちゃみたいにグラグラ揺れて、妙に滑稽だ。


「は、彼氏?ちが…」
「違わないよ!」


男が急に大声を出すが、正面の無表情の臨也が恐ろしいのか体はおとなしいままだ。
それにしても誰かわからない。こんな男と付き合ってる訳がないし、臨也ならわかっていそうなものなのに。首を傾げる静緒をみて、男は涙と鼻水を垂れ流しながら語り出した。


「静緒は俺が告白したらOKしてくれたじゃないか!」

「…ああ?」
「ひい!」


ちなみに今の「ああ?」は静緒の声ではない。
コイツもこんな声でるんだなー…と場違いに静緒が感心するくらいドスの利いたチンピラ声をだして、男を締め上げる臨也のものだ。


「お、おれが、きれいですねっていったら、笑ってくれたんだ。だから」
「あ、思い出した!お前公園の」


そうだ。めずらしく声をかけてきた奴。
遅咲きの桜がちょっと舞っててきれいで。そしたら話しかけられた。
俺にでも良いから言いたかったのかな、とちょっと嬉しかったのだ。
けど、それ以来あった覚えはない。ましてや。


「それからずっと一緒にいたんだ。郵便物もちゃんとチェックしておいたし、ゴミの分別もしておいた。そうしたら静緒が鍵をくれたんだ。照れ屋さんだからわざと職場に置き忘れたりして…だから俺は合いカギを作って、そしたらなんか冷蔵庫の中がさびしかったから食材を足してあげたり、掃除もしてあげたし、せ、せんたくとか、」
「洗濯…?お前ひょっとして」
「うん、ちゃんと下着まであら」
「わかった殺す」
「く、くやしいんだろう!俺が静緒に愛されてるから!そうだよ今日だって俺たちの家に帰ったら静緒が誘ってくれたんだ。胸元を開けてさ、スカートなんかこう、色っぽくめくってさ。太ももををなでたら気持ちよさそうに…」



(あれだ、あの夢だ…)