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みとなんこ@紺
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オアシス

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マグナと、トウヤの交わしている言葉が不意に遠く感じる。
ネスティは一つ重い息をついた。

・・・ほんの少しの違和感? 感慨?
それをどう名前をつけていいかはわからないが。
今まで或るはずのなかった瞬間なんだと、今更ながら強く意識した。

長く、長く培われていた『召喚』に関してのすべての常識が、ここでは通用しない。
意識から、何から、すべてが違う。

召喚する側も、される側も。
すべて、今、ここで同じ空気を吸い、同じ大地に立っている。そこには立場の上下なぞなく。
・・・本当に、不思議なところだ。
まるで、夢の中のようだ。

初めてここを訪れた頃か。以前そんな話になった際、
『言い方は悪いかもしれないが』
そう、前置きをしてソルが言っていた事を思い出す。
『“異邦人”を中心にして集まった、所だからかもしれない』
最初、ここに住んでいた者たちは既に、ここ以外に行く先をなくしたもの達だった。ついでに現れた者たちも、この世界では特異なものとして扱われていた。

その彼らを中心に据えて、ここの世界は動き出す。

行くところも、帰るところもなくした者たちが、最後に辿り着くことを選んだところだから。
何にも誰にも左右されず、ありのままの姿をさらしていられるように願った場所だから。

『・・・ここには、いまでは召喚獣と呼ばれている様々な世界の住人達が共に暮らしている。・・・誓約も支配もない、ただの同胞、友人として。・・・ここにはかつて“楽園”と呼ばれていたリィンバウムの最初の姿があるんだと、思う』

あの時、ソルは遠いところを見つめるようにしてそう言った。

――――ああ、そうだな。
そうなのかも、しれない。

あの時にはたぶん自分は「わからない」という顔をしただろう。ソルは確か苦笑していたようだから。
でも、今は。



「・・・ネス、何笑ってんの?」
はた、と我に返ってみれば。思わぬ近さにマグナの不思議そうな顔があった。
「わ」
「突然ぼーっとしちゃって、何かと思ったらいきなり笑ってるし。何か良いことでもあった?」
んー・・・? と辺りを見回す様子が、かつて、何もしらなかった頃の彼と変わらないようで・・・同じではありえない事も、わかっていた。
だけど。
変わらないように、心配をかけまいとわざとそうしている所もあるんだろう?
気付かないと思っているのなら、それはそれで甘くみられたものだと思う。

「――――・・・だ」

「・・・え? なんて?」

「ネスティさーん、マグナますたー?」

マグナが聞き返したのと、裏口からいまいち気合の抜ける大きな呼び声がしたのはほぼ同時だった。
思わず2人ともが裏口に視線を向けた。
ひょい、と顔をのぞかせたその声の主は、いまいち危なっかしい足取りで駆け寄ってくる。
「マスターが朝ごはんがまだならご一緒にどうかって仰ってますの~」


あ。


ふと辺りを見てみれば、さっきまでそこにいた筈のトウヤの姿が消えている。
「いつの間に・・・」

「どうされますか?」
無邪気に見上げてくるモナティの頭に、ポン、と手を乗せる。
「・・・いただこうか」
「ネス?」
「すぐに行く、と伝えてもらえるかな」
「はいですの~」
トトト、と駆けていく背を見送りながら、ネスティはまだ動こうとしないマグナを振り返った。
「待たせるのは失礼だろう。マグナ」
「あ、うん」
何か問いたげに視線を向けてくるのをきっぱり気付かない振りをして、ネスは声を落としてマグナを呼んだ。
「な、何?」
「君を捜していた理由だよ。・・・昨日、本部から連絡があったんだ」
「!」
「どうせ君の頭には全部入らないと思うから、部分部分を要約すると、『力をもう少しコントロール出来るまで修行して来い』・・・とのありがたいお言葉をいただいた。・・・まだルヴァイドの様子もおもわしくないようだし、帰るのは当分先になるだろう」
「それじゃ・・・」
「ちなみに僕にも辞令が下された」
「え!?」

一気に不安げな表情になったマグナを見遣り、ネスティは僅かに苦笑を浮かべた。
・・・本当に、信用ないな、僕は。

「・・・君は実践ばかりが先にたって、理論がまったく追いついていない。ソルにも協力をお願いした。・・・容赦はしないから覚悟しておくんだな」
「あの、ネ、ネス・・・?」
それって、どういう・・・?
「・・・お目付役は継続するように、だとさ。義父さんはまだ僕にお守りを押しつけるつもりらしい」






作品名:オアシス 作家名:みとなんこ@紺