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綾凪ちひろ
綾凪ちひろ
novelistID. 11573
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イングランドの憂鬱

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どうしたらいいかわからずに俯くイギリスの腕を唐突にスコットランドは引っ掴んだ。細い腕を凄い力で掴まれたイギリスはぎゅっと眉を寄せた。それでも、スコットランド以外の誰かにされたときのように抵抗することはできなかった。イギリスが本能的に恐れているのがこの兄だった。抵抗しないイギリスをいいことに、スコットランドはそのまま腕を引っ張って、大きく高級感のある、イギリスも好きそうなデザインの仕事机に、天使姿になったイギリスの肢体を組み敷いた。
一応仕事をしていたらしく机の上にあった書類が、細かい刺繍の施された絨毯にはらはらと落ちていく。
「あ、あ……」
実の兄弟だというのにスコットランドはイギリスよりよっぽど発育がよかった。たくましい身体に完全に押さえ込まれて、イギリスの顔は、真っ青を通り越して真っ白だった。最初からわかりきっていたことではあったけれども、イギリスはもう好きにされるしかなかった。
身体を動かすことすら制限されたイギリスを見下ろし、スコットランドは愛おしいものを見つめるように目を細め、低い声で囁いた。
「可愛い弟のために、俺も久々に悪魔になってやるよ」
「ひ、ぃっ……んぅっ」
なんとかそれだけは避けようとするイギリスの薄い唇に、スコットランドは自分のそれを無理やり押し付けた。びくっと大げさなくらいに肩を揺らし、それでも身体を捩って逃げようとするイギリスの頭を大きな手で固定して、スコットランドはイギリスの暖かい口腔の中にぬるりと舌を滑り込ませた。イギリスは自分の内部をにじられる感覚に身体を震わせながら、ぎゅうっと耐えるように瞼を閉じた。
ぎゅう、と星のステッキを握り締めるものの、後にまたお仕置きされるかと思うと、魔法を使ってスコットランドから逃げようとは思わなかった。
無理やりされるキスの最中に、すぅ、と身体の中から力を抜かれた感覚がした。まただ、と思った。スコットランドはイギリスのように自分の力で悪魔になれるわけではなく、イギリスから魔力を吸い取って悪魔になるのだった。魔力を吸い取られたイギリスの天使の羽は、きゅるると小さくなった。
だからといって、スコットランドはイギリスのように『悪魔』らしい姿になるわけではなかった。少し『魔法』が使えるようになって、瞳に淡い金色が混じって、いつもより更に鬼畜になる。ゆえに、イギリスは『悪魔』のときは兄をいっそう恐れていた。本当に、何をされるかわからない。
ぺろり、とイギリスの唇が舐められた。それは、兄が口付けのときに唇を離す前にする癖だった。イギリスがそうっと瞼をあげると、そこには『悪魔』になっている自分の兄がいた。
「ごちそーさん」
スコットランドは唇を離すと、満足げに笑った。魔力を奪われていっそう無力になったイギリスの視界はぼんやりとしてきた。気をどこかにやってしまいそうだった。
いっそそのほうが楽なのかもしれない、と思った。
だが、この兄がそれを許してくれるはずもなかった。
おもむろに、スコットランドはまた煙管を手に取ると、今度こそ熱い雁首をイギリスの首元に押し付けた。ひ、とイギリスは喉を引きつらせた。
「ひぅ、やぁぁっ!」
「てめぇ、なに俺に無断でトんでんだよ、あぁ!? 誰が寝ていいっつった!?」
スコットランドは声を荒げると、より強くぎりぎりとイギリスの首元に熱された煙管を押し付ける。もう既にそこは真っ赤というよりも赤黒くなってしまっていた。
すっかり怯えたイギリスの視線が、縋るようにスコットランドを見つめた。だが、スコットランドは、それを鼻で笑うと、煙管をイギリスの肌から離した。ほう、とイギリスは安堵の溜息を漏らした。だが、スコットランドは、今度は無防備にさらされたイギリスの太股に手のひらを這わせた。
兄にそうされるのが初めてではなかったイギリスは、黒い手袋のざらりとした感覚を、いやだと思いながらもふるりと身体を震わせ、なんとか抑えようとしても声を漏らしてしまう。
「ぃ、あ……」
「啼くんだったらもっと啼けよ。中途半端にしたら猿轡噛ますぞ」
スコットランドだったら冗談ではすまなくなりそうだったから、イギリスは兄の言うことに従うしかなく、こらえようとした嬌声をそのまま吐き出した。
自分に陥落しきったイギリスを見て、スコットランドは満足げに目を細めた。
「ぁう、ひゃっ……!」
「イギリス、ここにいるの!?」
今からいいところ、という場面でさえぎったのは、スコットランドはあまり聞かないが、イギリスはしょっちゅう聞いている声だった。それでもスコットランドもそれが誰かがわかったようで、ちっと舌打ちをした。第三者の介入は面倒だとも思ったのだ。
だが、イギリスもまたそう思っていた。特に、アメリカにこの姿を見せるのだけはいやだった。自分にのしかかる兄を恐ろしく思いながら、猿轡をかまされる覚悟で、イギリスは声を漏らすまいと必死に自分の口を押さえた。
それを見たスコットランドは、先ほどまで面倒だと思っていたアメリカの介入を喜ばしいものだと思い、にやりと口角を上げた。そして、ドアの向こうまで届くような声で、アメリカに話しかけた。
「よぉ、超大国! 愛しのオニイサマならここにいるぜ!」
信じられない、という目でイギリスはスコットランドを見上げた。スコットランドの声を聞いたアメリカは、がちゃがちゃとドアノブをまわした。が、ドアには鍵がかかっているために開かない。イギリスの驚いた表情を鼻で笑うと、スコットランドは魔法でドアの鍵を開けた。
すると、すぐにアメリカが部屋に乗り込んできた。
スコットランドは楽しそうに笑い、イギリスはもう声を出すこともできないくらいに唇をかたかたと震わせ、真っ青な顔をしている。そして部屋に乗り込んだアメリカは、そんな二人の状況に目を丸めた。
だが次の瞬間、アメリカはちっと舌打ちをして、懐から銃を取り出し、机の上にイギリスを組み敷いているスコットランドを的に発砲した。くっと喉を鳴らしたスコットランドの燃えるような赤い髪を、銃弾が掠めた。
「次は当てるよ」
「は、これの何がいいのか理解しかねるな」
肩を竦めたスコットランドに近づき、アメリカは銃をしまってから動くことすらままならなかったイギリスを奪い去った。スコットランドはその間も笑みを崩そうとはせず、アメリカの動向を面白そうに見つめていた。居心地の悪さを感じながらも、ふるふる震えているイギリスを片手で抱えあげた。
スコットランドには何も言わずにアメリカは背を向け、ドアに向かった。だが、ドアノブに手をかけた瞬間だった。
背後から燃えるような殺意を感じ、アメリカはまた懐から銃を取り出しながら振り向いた。アメリカに抱えられていたイギリスは、不意に星のステッキを落としてしまった。それに気付かないままアメリカが振り向くと、テキサスの弦を、ちゅん、と銃弾が掠め、それはがしゃんと床に落ちた。伊達眼鏡だから特に支障はないが、テキサスのほうに地震やらが起こったかもしれない。
作品名:イングランドの憂鬱 作家名:綾凪ちひろ