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オチない来神SSSS!!

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2。臨也と静雄―β



 席替え怖い。実に怖い。本当に、怖い。
 俺達の周囲の言葉を代弁するとこうなるだろう。おそらくほとんど全員が内心席替えのやり直しを求めているだろうが、当の本人がくじ引きで決まったことに文句はつけられないと必死で我慢しているのでしょうがない。もう一人の当事者である俺はどうでもいいって感じだし。彼のことは苦手だけれど俺も一々作意のない結果に抗議するのもどうかと思うんだよねぇ。それにこれほど珍しい状況っていうのもあまりないと思うから、逆に楽しむっていう手も有じゃない?

 「ねー、シズちゃん」
 「テメェはさっきからベラベラベラベラ・・・!授業中だってのがわかってねぇのかコラ」

 わお。そこらの優等生的ご指摘をそこらのゴロツキみたくいってくれて有難う!
 にこりと笑う俺に対しシズちゃんはぴしりとペンを軋ませた。シズちゃんの力に耐えるなんてすごいペンだなぁどこの会社のか今度調べてみよう。もしかして特注とか?あり得る。

 「それに今俺達がどこにいるのかわかってんのか」
 「んー、教室?」
 「教室は教室でも、一番前の、しかも教卓のすぐ前だろうがっ」

 目の前の先生に配慮してるのか、声を最小限に抑えて食らいつく寸前の犬のようにシズちゃんは俺を睨む。
 いやあ同じクラスになったっていうのもびっくりなのにそれに加え席隣りなっちゃうとか本当驚きだよね。さっきいったようにくじ引きで誰のせいでもなく決まったから先生も生徒もどうしようもないんだけれど。いやぁ学級委員長が俺の名前を教卓の前に書いた時も先生が汗びっしょりだったのに、その隣にシズちゃんの名前が書かれた時と言ったら!っていうか書いてた学級委員長の手が微妙に震えてたよね!あの瞬間の俺とシズちゃんを含めたクラス全員の心の声はこれだ。チェンジ、お願いします!
 みんなそう思ってるのが丸わかりなのにあえて慣例通りに済まそうとする先生も先生だし生徒も生徒だなぁ、それに授業が変わって入ってくる教科ごとの先生たちの俺達を見た時の顔がもう、ね!これだから人間は愛おしい!
 ・・・なんて俺みたいに割り切れればいいのに、シズちゃんは身体は規格外中身は人間を気取っているのか俺に殺気を向けながらも授業に集中しようとし、今もがさごそと教科書を出そうと机を漁っている。というか疑問何だけれども、俺が直接君に何もしなくても君が他校の不良とかに絡まれた時はさぁ、やっぱり後ろのドアから入ってきて周りの生徒のそらしてるようでそらしてない視線を受けながらそこに座るのかな?ドアから一番近い席が君の特等席になるのはいつなんだろう。ねぇ、シズちゃん。
 そんなことを考えてたら急に名案が浮かんだ。といってもシズちゃんを殺せるような方法が浮かんだわけでもなく、ただのちょっとしたことなんだけれど。
 俺はまた小声でシズちゃんに呼び掛ける。

 「シズちゃんシズちゃん」
 「だからテメェは黙れっ」
 「机くっつけないと筆記用具墜落するよ」

 シズちゃんはやっと机から教科書とノートを引っ張り出して、ぽかんとこっちを見た。

 「・・・・・・・・・そうか」
 「うん。そう」
 「そうか、なら仕方ねぇな」

 一人納得したように頷くとシズちゃんはがたごとと机をこっちに寄せて、「てめぇも動けよ」なんていうから俺も肩をすくめて少しだけシズちゃんの方に机を寄せた。
 さっきまで黒板を向いてた先生がこちらを振り向いてぎょっとした顔をする。俺は懸命にノートと教科書をめくり始めるシズちゃんを横目に、しぃと唇に人差し指を乗せた。



 数時間後、一部のクラスメイトが「折原と平和島の隣合わせはいつまで続くか」と賭けていたこととやっと気付いたシズちゃんの暴走によって、俺達のクラスではホームルームでもう一度席替えがあった。俺は一番左斜め前の席、シズちゃんは右の列の一番後ろ。


 作意的なものを感じ、俺は密やかに笑った。


作品名:オチない来神SSSS!! 作家名:草葉恭狸