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みとなんこ@紺
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One-side game

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正直、持ち主がいない間に勝手に見るのは少し気が引けるが、ここでリュカの折角の好意を無にする訳にもいかない。手招いてくるのに取りあえずついていって、奥の書斎と思しき部屋を覗き込む。
ここにも様々な方面の本が無造作に置いてあった。
さっき、薬の研究をしていると言っていたので、この広い分野の本にもちょっと納得した。中には初歩の錬金術の本もある。確かに興味を引かれる物もあったが、ここで没頭するわけにもいかない。
適当にその辺の本を手に取りながら、それからはリュカがせがむままに、弟と見聞きしてきた遠くの街の話を聞かせてやった。
列車が来れば、夜までにはこの街を発つ。また一人にしてしまう事が少し気になったが、そんじょそこらの子供より余程しっかりしているので、きっと大丈夫なんだろう。これまでのように。

そうして2人して奥に篭もっていたら、玄関の方から、リュカ、と呼び掛ける声が聞こえた。
「あれ?おばさんだ」
トコトコと玄関へ向かう後ろ姿を見送りつつ、書斎の机の上を何の気なしに眺める。掃除はしているのか埃まみれというわけではないけれど、こちらも父親が出掛けていった時のままにしてあるのだろう。何かを書き付けたメモや、手紙も放置されたままだ。
薬物反応が並ぶ。薬学は専門ではないのでよくは判らないが書き散らかされた元素記号の散らばり具合は錬金術の構築の時の理論を纏める為の散漫な仮定を繰り返している時のメモによく似てる。

――――グリセロール、トリグリセリド、

玄関先から、リュカと誰か年配の女の人の声が聞こえる。
「帰ってたのかい。こっちに顔出さないからどうしたのかと思ったよ」
「ごめん、人が来てたんだ。もうちょっとしたら行こうと思ってた」
「おや、友達が来てるのかい」
「うん。…っても、お客さんだったんだけどさ。次の汽車まで時間があったから」
「まぁ。・・・リュカ、こんなこと言ったら何だけれど、あんまり知らない人をお家に上げちゃいけないよ?最近物騒だからねぇ」
「大丈夫だよ!エドはそんなんじゃないって!」

――――硝酸イソソルビド・・・

それらを頭の中で遊ばせていると、ふ、と何かが引っ掛かった。
・・・この並び・・・?
「お前はしっかりしてるから大丈夫だろうけどねぇ。気をつけなよ。さっきも古くさい大きな鎧着たのが近くを歩いてたから」
エステル化・・・って、ちょっと待った。
「ねぇ!」
聞き流そうにも聞き捨てならないファクターに、書斎から顔を出す。
リュカと話していた女性はいきなり呼び掛けられて驚いたようだったが、エドワードの顔を見るなりその怪訝な物に変わる。
「その鎧ってまだこの辺にいそう?」
「いそうも何も・・・ついさっきだよ、そこの四つ角で・・・」
「エド?どうしたの?」
「ちょっと行ってくる!すぐ戻ってくるから!」
物凄く心当たりのある単語だ。
気持ちははやるが何とか押さえつけて、本の山から抜け出ると外へ飛び出す。その女性が指し示した方へ駈け出した。
弟だと確信していた。先にイーストシティに行ってろと言ったのに、またこの街に戻ってきたらしい。それとも司令部からの指示か。・・・恐らく後者だ。
四つ角、の辺りに出たがアルフォンスの姿はない。
入り組んだ街中は見通しが悪く、どちらに行ったかもさっぱりだ。
これはまた適当に行くしかないか、と思った所で、微かにカシャン、と金属がすれる音が聞こえた。さっきのパターンと同じ、橋の下だ。
手すりから乗り出して階下を見れば、見慣れた銀色の鎧の騎士。
「アル!」
「えっ・・・あれ、兄さん?」
「こっち!上だ、上!」
振り仰げば、光を弾いて眩しい金色が飛び込んできた。ぶんぶんと手を振る兄に大きく振り替えしておいて、弟はハタと我に返る。
「・・・兄さん、トランクまだ取り返してないの?」





作品名:One-side game 作家名:みとなんこ@紺