One-side game
今回の件にしたって、無茶苦茶だと思う事でも、軍部の面々にしてみればたいしたことではないのかもしれない。その時その時の流動的な状況の中で、どうすれば最善の策を取って、無駄なく目的を達成するかに重点が置かれるからだろうなんだろうか。
過程はさっくりと流してでも、最大の成果を。
それがたぶん、あの黒い上官のモットーなんだろう。
それはそれで一理ある、気はするけど。
「証人のオッサン曰く。工場に見慣れない連中が出入りしていて、何かの荷物を随時運び出し始めてるそうだ」
「…証拠隠滅?」
「それか横流しの出荷作業か、だな」
「踏み込んで現行犯で摘発狙ってんだ?」
「向こうが行動早めたんだったら、こっちはその上行かない事には逃げられちまうからな。危なくなったと思ったらほとぼり冷めるまで大人しくしてるだろうし」
そうなったら後々面倒だし、というのまでは分るけれど。
「・・・それで。何でオレたちまでそっち向かってんの」
「早く来て隊の指揮とれって大佐が言うから」
「・・・・・・。」
・・・や、それオレたち関係ないんじゃ。
「ちょ…っ少尉ー!?」
「いいじゃん付き合えよつれないなー。ここまで関わったんなら、ついでにもう一仕事してってくれよー」
「なんか最近司令部の皆、大佐化してねぇか!?」
「あはははははは失礼だなそんな事ないぞー?」
なんか棒読みだし。
運転しているからとは言え、ハボックはさっきから視線を合わせようともしない。
「・・・・・・にいさん」
荷台でこちらに背を向けて座っているアルフォンスが割って入ってくる。
「何だ!?」
「シートベルトあるなら、しておいた方がいいよ」
危ないから、と続けるアルフォンスの声まで、何だか平坦だ。
…いや、というか何かを悟ったというか、諦めたというか、そんな感じの。
「アル?」
妙に静かな声に嫌なものを感じて、エドワードはキャビン後部のガラス越しにアルフォンスの様子を伺った。
背をキャビンに預けたアルフォンスは膝を抱えるようにして座り込んでいる。
行きしなの汽車で聞いたんだけど。
「ハボック少尉ね…」
忙しくてここ3日くらい寝てないんだって。
「人乗せて運転するなよそんな状態で!!」
「軍はなー、過労死は保障してくれないんだぞー?」
「聞いてねぇー!」
気のせいでなく、頭痛がしてきた。
何か、この意味の分らない妙な強引さには覚えがある。もうここまで来たら逃げられそうもないが、ここは頭を過ぎっていった黒い上官に責任とって貰わねば。
「オレらは助かるんだけどなー。お前がいたら篭城されても穴開けてもらえるし」
「壁ぶち破るだけなら大佐のが得意だろ!」
何だかもう話が通じない。アルフォンスの諦観の意味がわかって、エドワードは自棄のように叫んだが、
「オレはまだ死にたくない」
と、その時だけは真顔で返されて、思わず目を瞠った。
「は?」
・・・この話の流れでなんでそれ?
「・・・・・・・・・・・・・・・少尉」
「んー?」
「そのターゲットって何扱ってる所なんだ?」
「表向きは医療薬品の開発と生産」
「横流しされてるブツは?」
「ニトロ」
作品名:One-side game 作家名:みとなんこ@紺