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空の境界~未来への軌跡~3

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蒼崎棟子はこの町に来たころ「設計士」として色々な建物の設計に関わっていた。その中には緊急の「工房」に成る物も少なからず作っておいたのだ。そして、その中で身近にある建物に潜り込んだ。ここは、「進学塾」として使われている筈だったのだが、すでに廃業してしまったらしく、廃墟状態になっていた。それにも関わらず、人が住んでいた形跡があった。おまけにただの人とはいえない。「魔術師」ないしそれに準ずる何者かであることは、各階の部屋ごとに古今東西の魔術式や最上階には、天井が無くその代わりに「星見台」という「占星術」に使われるものが、「法具」ではなく机や椅子でくみ上げられていた。机や椅子を法具に目立てて「陣」を作れるのだから、明らかにただの「オカルトマニア」には出来ない芸当だった。
しかし、今はそれが誰か等と考える暇が無かった。予想以上に魔力を消費してしまった。

「「直死の魔眼」、「サーバント」の同時攻撃は予想外だったな。」

大輔に「忘却」の魔法をかけ、黒桐達が気が付かない内にこの町から消えようと思ったのに結構魔力を消費してしまっていた。これでは、青子と対峙する前にロンドンからの部隊に殺されるのが落ちだ。しかし幸いここには、魔力が溢れていた。どこの誰かは知らないが結構な魔力を蓄積していてくれた。しかしまるで、ここに私が来ることが解っていたかのようなタイミングは解せないものがあるが、正直今は魔力の回復が優先だ。
そして、ひとつの魔方陣をチョークで描くとその中央に座禅を組み呪文の詠唱を始めた。


「驚いたな〜。まだ日が出ているうちにここまで、たどり着いちゃうなんて。」

僕が、棟子さんを探して約半日もう日も傾いて夕焼けの空になっていた。そして、棟子さんが設計に関わった物件の中からここを調べ上げた。

「ここに、棟子さんがいるんですね。」
「彼女に名前なんて聞いてないけど、お探しの女性の魔術師さんはここにいるよ。」
「正直なんですね。」
「君に「嘘」なんて通じそうにないからね。」

ここは、かつて進学塾だったのだが経営がいきずまり廃墟になった建物だった。そしてまるで僕が来ることを予見していたように、なぜかアロハを着た二十代後半から三十代くらいのおじさんが待っていた。

「それに、怖い化け物には早々に立ち去ってもらいたいし。」
「棟子さんは、そんな…」
「君の婚約者「式さん」と言ったけ?彼女もそうだが人外の能力を持つ者は、大抵「化け物」の枠でかたずけられてしまう。それが、何故かは解るよね。」

深くは、考えたくないがだから魔術師たちは血族以外その事を隠してきたし、「遠野家」もその人外の能力覚醒させてしまうとのことで、「本家筋」以外はあまり関わろうとしないらしい。

「君も十分化け物だよ。」

今のはズキっと心が悲鳴を上げた。

「君を主人公にしたら、「サスペンスドラマ」なんて十五分枠に成ってしまう位の能力を持っている。このことだけで、警察の「捜査本部」なんてまったくいらなくなるだろうね。」

言葉を失った。

「気を悪くしたら許してくれ。それは、実に有益なのだが人間社会では「化け物」の域に入ってしまうのだから。」
「化け物ですか。」
「君の周りの人達は、自覚してそれに見合うように行動しているんだ。君も自覚して行動したほうが、もっと有益になるはずだ。」

僕はしばらく考え、アロハの男に聞き返した。

「なぜ、僕らのことを知っているんです?」
「単純な話さ。「占星術」で「おおよそ」の事は解るからね。ああ言っとくけど「協会」「教会」には黙っておいてくれよ。連中に知られると厄介だからね。」
「それじゃあ、貴方は一体何者です?」
「ただの、郷土史研究家と言ったら信じてもらえるかな。」
「「ただの」ではないでしょう。」
「そこは、突っ込んでほしくなかったな。面倒だから名前の「忍野メメ(おしのめめ)」でいいや。」
「そうですか。」

彼の名前は、嘘か本当か判別ができなかったが今は棟子さんの事の方が最優先だ。

「それじゃ、その化け物から一言いいですか?」
「なんだい?」
「それでも、僕も式も「人間」なんです。血も「赤ワイン」でもなけりゃ、肉が「パン」でも無い事は、同じ「化け物」の貴方なら解っていますよね。そういうことです。」

忍野メメは、笑った。

「ごめん、ごめん。自分そうだった事を棚上げしすぎたよ。確かにそうだね。これから会うであろう自分の運命に少々感情的になっていたようだ。」
「これから?」
「ああ。君達はまったく関係ない「物語」にこれから地方へいって会うことが解っているからね。それでちょっと苦労しそうだなと思っただけだよ。おっと言っただろ。君達たちとは「関係が無い」とね。」

僕の考えを見透かしたように「関係無い」と断言した。言い方を変えれば「関わらない」とも取れた。

「解りました。深くは追求しませんし早いうちに「仕事」を終わらせたいですから話は、これくらいにしておきますよ。」
「そうだね。彼女をまたしちゃ悪いものね。」
そういって廃墟に向かって歩き出した。
「あ、一ついいですか。」
「なんだい?」
「御助言ありがとうございました。これからは、少し自覚してみようと思います。」
「いやこちらこそ、失礼言っちゃって悪かったね。二度と会うこと無いと思うけどさ。」

一期一会まさにその言葉の通りだろうなと思った。そして振り返ることなく廃墟に向かって歩いていった。


~借金取り~


「ち、早いな。」

いくら、「協会」「教会」両方の組織にばれたからといって、この建物を割り出しそして進入してくるとはいくら魔力がほとんど無い状態だからといっても大失態だ。

「そっちのほう、良かったですか?」
「黒桐?」

何故こいつがいる?その疑問そのものが馬鹿らしい事に気がついた。幾重にも張り巡らされた手塩にかけた「工房」を守るための結界から、見事に「工房」まで辿り着きあまつさえ今までの事件を有得ないスピードで捜査、解決してきた男だ。ここを見つけるなんて簡単だったろう。それでも今までかかったのは、何かあるのかと勘ぐってしまう。

「私に何用だ。」
「用が無ければ、探して駄目でしたか?」
「出来ればな。」
「そう言うと思いました。大輔兄さんは幸い一命を取り留めましたよ。」
「そうか。」

内心「ホッ」とした。あの記憶消去の魔法を撃った後「教会」のエージェントに攻撃され、あの「青子」の助けた餓鬼が一緒だったせいで、感情的に成ってしまい前後の記憶が曖昧なのだ。

「ちなみに、現在は昏睡状態で「寝ている。」との事です。」
「何?」
「棟子さんを攻撃しようとした武器なのですが、魔法のことは解りませんが「精神攻撃用」の武器だったようで、その影響で「昏睡状態」に陥ったそうです。」

自分は、ただ「自分の事を忘れてほしい。」だけだったのにそんなことに成るなんて思いもしなかった。

「それで、私に用があるのだったな。」
「はい。簡単に言うと大輔兄さんを助けてきてほしいんです。」
「断る。そもそも何故私がそこまでしなければいけない?」