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大きなシオン ~自分探し・成長編~

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「もしも、もしもだよ、シオンが病気に勝てなくって、いなくなったら、竜は大丈夫?お母さんは絶対崩れる。絶対駄目になる。竜は大丈夫かな?
もちろん、シオンは病気になんか負けないと思ってるよ。でもね・・・。」
言っている意味が良く解らなかった。でも「うん、俺は大丈夫だよ。大丈夫だと思う。母さん助けるよ。」「そう!大丈夫かな?でもシオンが病気になんか負けるはずないから心配しなくてもいっか!」親はクリームスパを半分も食べていなかった。

病室に戻った。今日はシオン具合が良いらしい。
「竜、学校はどうしたの?シオンの所来ていて単位大丈夫なの?」
「なに言ってんだよ~。今夏休みじゃん。」
「あっそっか・・・。」
「今度は続けられそう?ちゃんと卒業してね。」
「学園祭で女装したんだ。結構いけてるよ。見る?」
携帯のシャメ見せた。「なに~?!かわいいじゃん。女としてシオン負けそうだね。」
シオンの笑った顔、久しぶりに見た。

シオンの手術の日が決まった。時間のかかる手術だって。
でも、手術すれば治るんでしょ?絶対成功だよ。

手術の日が来た。
「やっぱり手術受けたくない・・・。」当日になってシオンが言った。
「なに言っているの?この日のために頑張って来たんじゃないの?心配ないよ。皆待ってるからね。」「そうだよ!詩央ガンバだよ!」伯母さん達も来ていた。
病室に来た医者にも、シオンは同じ事を言った。
「そりゃないよー。今日は先生達も総動員なんだから。手術して元気になろ!俺達に任せて!」不安そうな顔しながら俺にちょっと手を振ってシオンは手術室に入った。

ICUって機械がピッピッピッピなっている部屋からシオンが病室に戻ってきた。
今度は一人部屋だ。TVも大きい。ミニキッチンもお風呂もついている。
取り合えずこの部屋しか空いてなかったんだって。
「高いんでしょ?この部屋。母お金は大丈夫?お金足りなくなったら私のアパートの貯金箱のお金使って。」相変わらずのシオン。
「せっかく大きいTVあるんだから何か持って来ようか?何観たい?」
「う~ん・・・。とりあえず白虎隊持ってきて。」
シオンは何年か前の年末スペシャルのビデオがいいと言った。
次の日、皆で「白虎隊」観た。
なんか暗くなった。「こういう時に観るビデオじゃなかったね。止めよっか?」シオンが言った。シオンがあんまりお金の心配するので、暫くして病室が換わった。

俺はカップラーメンかコンビニ弁当の繰り返し。
伯母さんが時々差し入れしてくれる。ハンバーグやポタージュスープ。メロンや牛乳。
「次は何がいい?」伯母さんは料理上手だ。
手術が成功したのに母親は帰って来ない。父親も毎日病院に行っている。

久しぶりにシオンの面会に行った。
シオンがアイスクリーム食べていた。「色々な物が食べれるようになったんだ。」
「これは熱さまし。あんまり熱が下がらないから、自分の体の中から冷やしているの!」
「ガリガリ君が一番いいんだけど、毎日だとあきるんだよね。」
母親は洗濯してくると出て行った。
病室に花があった。
「今日、中学の同級生が来てくれたんだけどね。みんな変わっていたなぁ。化粧のせいかな。私も退院したら、カラー、マニュキア、思いっきり化粧でもしようかな?」
面会に来てくれた事が嬉しいというより、少し落ち込んでいるように感じた。
「私はさ、一生懸命勉強して大学入って、やりたかった仕事についた。それはそれで私が自分で決めてやってきた事なんだけどね。親も喜んでくれていたし。」ため息ついた。
「ねえ竜、ホストってカッコいいと思わない?」
何?急にホストの話?
「ビジュアルで言っているんじゃないよ。店は箱でさ、その中で自分の力でお客つかむんでしょ?見た目も中身も自分に自信がないとやっていけないよね。いつも自分磨いて、お客様の心掴む努力して。男社会だよね。あーでもヤクザさんとか薬とかあるんだろうなぁ。やばいっか。でもでも、そんな厳しい中でも生き残っていける人は本当にすごいよね。水商売はーとか偏見あるけど、私はそんな事関係ないと思うな。官僚とホステスどっちが偉いですか?なんて比べられないよね。その道で極めれば、肩書き社会より実力社会の方が絶対強いと思うよ。」
「少し疲れた。寝るね。」シオンはベットの頭下げてくれと言った。
話をするのも疲れるんだな・・・。眠ったみたいだ。


夜中に起こされた。病院に行った。
伯母さん達もいる。酸素したシオン。両手に点滴している。看護婦さんが行ったり来たりしている。暫らくして静かになった。伯母さん達は仕事があるからって帰った。
伯母さん達が帰ったらすぐシオンは両目開いて「苦しい!」と言った。看護婦が来て口の中にチューブ入れて痰を引いた。「あまり取れませんねえ。また来ます。」
看護婦が出て行ったらシオンが叫んだ。「私、看護婦さんに見捨てられた!息ができなくなる!死んじゃう!母チューブよこして!自分で痰引く!」泣きながら母が言った。「私がするから。私が痰とる!私が死なせない!」
母親がチューブを思いっきり奥まで突っ込んだ。グエーッっと言ってシオンはカッと目を開いた。ズズーっといっぱい痰が引けた。「助かった・・・。」そう言ってまたシオンは目を閉じた。
窓の外が明るくなってきた。シオンは静かに眠っている。
俺はウトウトしていたからあの後の事はわからない。
目が覚めてシオンがいる事にホッとした。
シオン良かったね。負けなかったね。

シオンはまだ入院が必要なのだそうだ。
母親は家に帰って来た。時々面会に行く。

俺は一人でバスに乗って病院に行った。
今日はシオンに話さなければならない事がいっぱいあった。
学校は辞めたこと。彼女の事。シオンがいなくなるかもしれないという不安と恐怖の中、一人残された家で考えた事。今までの自分の事、これからの事。

「竜、生まれたってどういう事だと思う?」
「・・・。」
「死ぬ事なんだよ。」

「生まれたら死ななくてはいけないの。何時、どんな事情かは誰もわからない。人間は無になる。肉体は土にかえるんだよ。」「・・・。」
「生きる最初は地球で息をすること。それから食べる事。眠る事。大きくなったら自分で食べ物を得なければならない。動物も親が一生餌を運んではくれない。人間は働いて食べ物を得る。古い時代は自給自足で生きていた。今は頭脳でも肉体でも労働し対価を得なければ自分で生きていく事はできない。わかるかな?」生命論の講義みたいだ。
講義休憩。
「ラルクは昔の曲の方が好きなんだよね。一緒に聞く?」シオンはCDプレーヤーのイヤホンの片方を俺に渡した。「これ復活曲だよね。」ハイドさんの高い声、「虹」だ。
「私も復活したからね!これ聞いた後にGLAYの『ここではない、どこかへ』聞くとなんかほっこりするんだよね。歳とったなぁ~。」
「で、彼女とはきちんと別れたの?」
「あんなバカな女だと思わなかった。もう別れたと同じだよ。」俺、本音言った。
「竜!殴るよ!」シオンの拳を久しぶりに見た。