PUPPY LOVE
事の始まりは数時間前のベルの部屋からだった。ベルが日本側にわざわざホットラインを繋いで頼んでおいたゲームソフトが届き、早速一人で遊んでいたのだが、コンピューターとの対戦が面白くなくなってきた所にマーモンの姿を見つけた。
「ゲームなんてそんな下らないこと、あぁ、レヴィが暇そうだったよ」
と素気無く言って去ろうしていたのに、
「そっか、負けたら恥ずかしいもんな」
と意地悪そうに笑って見せた。この表情と口調にカチンと来たのか、マーモンはずかずかと部屋に入ってくるとそのままベルが寝そべっているベッドの上に上がり込んで、空いている方のコントローラーを引っ掴んだ。
「僕が勝ったら今度のベルの報酬、全部もらうからね」
「いいよ」
軽い返事に、キッとこちらを睨んだマーモンに、ベルは長い前髪の奥で目を細めた。
「そっちが負けたら王女のカッコすんだぜ、マーモン」
たかがゲームと甘く見たのが間違いだったのか、いやそもそも系列が向いていなかったのだろう、マーモンにとってこのゲームの結果はさんざんだった。
三連敗した後は、王女コスプレのことも報酬総取りのことも忘れるほど、とにかくベルから一勝を取りたかったのだがその願いは叶わないまま終了となった。
計十回の対戦を終え、茫然とTV画面を見つめるマーモンの肩をぽんと叩いて、振り向いた彼女にベルは物語に出てくるチシャ猫のように、にーっと笑いかけるとベッドを下りた。そうして奥にある巨大なクローゼットから何やら持ちだすと、
「はい、これ。絶対似合うと思って買っておいたんだ」
とマーモンの目の前に広げて見せた。
「ちょっと待ってベル、本気じゃないよね?イヤだよ僕!」
「えーだって約束したじゃん」
一回でも勝てたらナシだったのにねー、とまた意地悪そうに笑って、ベルは暴れるマーモンをずるずるとルッスーリアのもとへ引きずっていったのだった。
作品名:PUPPY LOVE 作家名:gen