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認識は明日イーハトーブで

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「無論知っている。お前の名まえを知らない者なんて、先進国では誰もいないね。まあ俺には適わないだろうが」
「そうですね。あなたは欧州、対する私は東の片隅に」
「ナンセンスなことを言う。位置なんて関係ないだろ?」
「そうでしょうかね、果たして。あなたは私の姿を見たことだってないでしょうし」
「おいおい僻むなよ。先だってのサッカーだって指導してやったろ?」
「それは個人の話でしょうが」

そうだったか、と、持ち前の軽薄なかんじで微笑みを寄越したフランシスに、彩る満開の花々は妙に色彩が映えて見える。本田は目線だけを少し外して近くの薔薇を手折ってみたが、選んだひとつは本田が手にとるなり妙にくすんだ色ばかりを強調させるのでたまらない。本田は自分の領分というものをよく理解していたしそれに準じた発言をいつもしたから、フランシスにとって今の本田は実に不可思議なものらしい。お前ってそんな喋れたのな、などと嘯いて、彼はまた、満開の薔薇の景色に美しく埋没する作業に意識を向ける。
本田はその品のよいストライプのスーツに、仕立てのよい清潔なシャツに、透きとおるような肌の間に、間にわずかな苛立ちの成就するのをじっと見つめた。そしてアイビーの張り付く白壁の、ペンキの剥がれたところを神経質そうに何度か指でこする。フランシスは―― その壁に、本田に、押しつけられたままの姿で悠然と、佇んでいる。堂々たる立ち姿をいっぺんも揺るがせないまま、ただ、あるがままの風景をいつくしむかのように。あるがままの、本田の理智の放棄を、苛立ちを、征服欲を、自涜的な性衝動をも受け入れるかのように。それはまるで、彼の生来持って生まれた愛情みたいなものが、ただただ溢れて行き場を失い小さな竜巻となって渦巻いているみたいだ。

「口説きたかったら口説いたらいいし別にこのままでも、上でも下でも? おにーさんは万能なんだ」
「ですから、そういうのじゃありません」
「じゃあどういう? 俺の国ではこういうのは、愛を語らう恋人同士がする体勢だ」
「奇遇ですが私の国でも、まあそういった意味でしょうね、これは」
「それなら?」
「それならば」
作品名:認識は明日イーハトーブで 作家名:csk