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バールのようなもの
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novelistID. 4983
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月下甘藍

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出会った時、彼はキャベツと名乗った。彼によると、人間の姿になった経緯はこうだ。
(三つ目の願いは「人間になってみたい」にしました。悪魔は「一年間だけ人間にしてやる」と言って背中から大きくて真っ黒い翼を広げました。そして手から炎が立ち昇ったんです。その炎を見つめていたら吸い込まれる感じがして…気が付くと、僕は…人間の姿になっていたんですよ!)
最初は冗談だと思っていた。しかし彼は世間の常識どころか、人間の五感すら知らなかった。赤ん坊のように、触れるもの全てに驚いていた。
まるで、本当に人間じゃないみたいに。

彼は自分の名前も知らなかった。だから私が「縁」という名前をあげた。
私の名前の「緑」によく似た字にしたのは、冗談のつもりだった。でも彼は気に入って、その日から彼は「縁」になった。

それからの一年間は本当に楽しかった。
私は縁に全てを教えた。音楽を聴くこと、映画を見ること、走ること、泳ぐこと、歌うこと。
縁と一緒だと全てが新鮮で、どんなことも特別になった。

縁も私に自分のことを教えてくれた。
(キャベツは一番最初に外側の葉が育って大きくなった後、玉の中からどんどん新しい葉が生まれるんです。…ほら、外側の葉の方が硬くて、真ん中の小さい葉はやわらかいでしょう?)
(花は咲きますよ、キャベツにだって!畑一面のキャベツが大きく葉を広げて、溢れるように花を咲かせている様子は、それはもう綺麗なんです。そうだ、緑さん。今度一緒に見に行きましょう!)

一緒にいる間、縁はキャベツに戻ることを一度も口に出さなかった。だから今日がその日だなんて思ってもみなかった。
いや、違う。
私は誰もいない窓辺に語り掛けた。
「…縁、キャベツに戻るなんて冗談でしょ?どこかに隠れてるんでしょ?…キャベツだなんて、本当は全部嘘なんでしょう?…ねえ!」
縁が消えた瞬間、気が付いてしまった。
私は、縁の言葉を信じていたつもりだった。信じることができていなかった。彼のことを、「自分をキャベツだと思い込んでいる人間」としてしか見ていなかったのだ。

その時、玄関のドアの向こうから物音がした。
「縁!?」
ほとんど反射的に玄関へと駆け出した。きっと縁が帰ってきたんだ。泣きそうな私の顔を見てばつが悪そうに笑って、さっきのは冗談だと謝るだろう。
そうであることを願いながら、玄関のドアを勢い良く開けた。
作品名:月下甘藍 作家名:バールのようなもの