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【ガンダム00】マイスター

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 ロックオンはティエリアの後姿を見つめたまま、入口の壁に寄り掛かった。
「あれから飯も睡眠もろくにとっていないだろ、体壊すぞ」
「コワスゾ!コワスゾ!」
 足元で飛び跳ねているハロが反復する。甲高い声がティエリアにはいつも以上に耳障りに思えた。
「らしくねえなあ、気丈なお前がだんまりだなんてさ」
「なぜ誰も俺を罰しない」
 不満を漏らすよう吐き捨てる。身勝手な行動を取ってしまったのはティエリアだ。あの後ティエリアは我に返り直ぐさま持ち場へ戻り、任務完了することができたが、しかし簡単に許される事ではない。
「処罰なら受けただろう」
「たった一日監禁室に入れられただけだ」
「十分だろう」
 ティエリアは唇を噛み締めた。
「これだからあなた達は…」
 ――甘すぎるのだ。
 続けられた言葉に、ロックオンは眉根を顰めた。
 この頃感じる違和感。それをティエリアは無視せずにはいられなかった。以前はもっと冷静に物事を判断できていたはずだ。しかしこの者たちと昼夜を共に過ごし、作戦を進める中、少しずつ己の感情に変化が表れ始めているような気がしてならなかった。
 ――このままだと、いつかヴェーダに見放されてしまうかもしれない。
 予感がティエリアを不安にさせた。
「だからか?」
 間近で聞こえた声に思わず振り返る。気づけばロックオンは目と鼻の先まで近づいてきていた。
「だから自分で処罰を与えているのか?飲まず喰わずで、ヴェーダルームにも近付こうとしない」
「!なぜそれを知って」
「……本当にお前は不器用な奴だな」
 呆れた言葉とは裏腹に、優しい笑みが落とされる。ティエリアは目を見張った。
 ――なぜ彼はこんな表情ができるのだろう。
 掴みどころがなく常に飄々としている彼を、ティエリアは最も理解しがたい人間だと思っていた。けれど、最も安心と信頼を置いている人物であることも、また事実だった。
「とにかく、ほら」
 目の前に紙袋を差し出され、唖然とする。袋からは香ばしい匂いが漂っていた。
「ボクスティっていう俺の国の料理だ。何でもいいから腹に入れておけ。体調管理もマイスターの仕事、だろ?」
 肩をすくめ、ロックオンは笑った。
「なぜあなたは…」
 ティエリアは途中で言葉を飲み込んだ。縋る目で見つめるティエリアに、ロックオンは苦笑すると、背を向けた。
「じゃあな、今日はちゃんと寝ろよ」