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【ガンダム00】下弦

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 そうだった。結局昨日のミッションはソレスタルビーイング初の失敗に終わった。
 あの後援軍が直ぐに駆けつけ、一瞬にして場は人革連の最新モビルスーツで埋め尽くされた。前線がものの数分で落とされる事は予測されていたのだろう。ガンダムの戦闘力を低下させ、そこを付け狙うのが人革連の計画だったのかもしれない。
 しかしロックオンは緊急事態にも関わらず、己の指一つ動かす事ができなかった。ティエリアの懸命に自分の名を呼ぶ声も、スメラギの応答を要する声も、ロックオンの耳には届いてはいなかった。ただ最後に見た少年の声と姿が頭の中を反復していた。
「作戦行動中止。ヴァーチェ、デュナメス、戦線離脱します」
 そうどこか遠くで、ティエリアの声が告げた事だけを、覚えている。


「……悪かった、全て俺の責任だ」
「そう思うなら、早急にヴェーダに報告書を提出するべきだ」
 ロックオンを一瞥し、ティエリアは再び己のパソコン画面へと視線を戻した。今はそのいつもと変わらないティエリアの超然とした態度が、ロックオンにはありがたく感じた。
 作戦行動失敗に処罰は特に与えられなかった。スメラギは自分の戦術の見誤りに、ただただ謝罪の意を述べた。
 一つ溜息を吐き、ロックオンはソファの背に深くもたれかかった。
「……俺は甘いのかな。マイスターとして戦うことを決めた時から、腹は括っていた筈だった。時には残虐さも致し方ない。でも」
 ティエリアは再びロックオンへと視線を移した。
「想像以上に、辛いな」
 目元が苦痛に歪むのを見逃さなかった。
「誰にでも家族は居る、それぞれの人生がある。それをたった一瞬で奪っちまうんだ、俺たちは」
「……戦争が続く限り同じだ」
「でも死ぬ意味があるんじゃないのか?民族のため、宗教のため、国のため。じゃあ俺たちと戦う奴らは何を目的としている!戦うことに何の意味がある!自分の信念のために死ぬ方がよっぽど救われるんじゃないのか!?結局俺たちがやっていることは、エゴでしかない!」
 そこまで言い、ロックオンは我に返った。
 ――しまった。
 後悔しても、もう遅い。
「……悪い、今のは忘れてくれ」
 ロックオンは逃げるようにして部屋を後にした。


 夜の砂漠は冷え込む。