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レイ・イチ ~けったいなお人は好きですか~

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他の人々にはレイとイチの2人は眼福だった。
妖艶な紅い目をもつ端整な顔をした吸血鬼と耳や尻尾などがとてもよく似合っている日に焼けた小柄な可愛らしい小動物(だから狼男だってば)。対照的な2人に女性と一部の男性はため息をついた。

周りから決まり文句が掛けられる度、2人はにこやかにお菓子を渡す。イチも楽しそうに色々な人に声を掛ける。しかしレイは先程ルックに言ったきり、誰にも声をかけなかった。
イチはあれ?と思ったが、そういえばレイは人から物を貰うのが苦手だったっけ、と思い出した。でも自分にも言わないって・・・。

「・・・俺からですら嫌なのかよ・・・。」
「ん?何か言ったあ?イッちゃん?」

ついボソッと漏れていたようで、イチは何でもないと慌てて否定した。
その日は皆とても楽しんだ。夜にはカボチャ料理を使ったパーティとダンスが開催された。

「レイ、今日はどうすんだ?」
「んーそうだねん。もう遅いしーて思ったんだけどー今日はお客さん多いみたいで宿あいてないんだよねん。」
「そうか。じゃあ仕方ないからまた俺の部屋泊まってったら?」
「あは、ありがとん。」

部屋に入るとレイが聞いた。

「ねえ、イッちゃん、その尻尾はどれにつながってるのん?」
「ん?ああこれ?別に普通に服にくっつけただけだけど?」
「そっかー。ま、そりゃそうだよねん。」
「?何だ?」
「ううん、別にん。でもまあ尻尾なんてあろうがなかろうがどっちでもいいけどねん。」
「は?何言ってんだ?」

不思議そうに首を傾けながらもイチは仮装をとこうとした。

「あ、待ってイッちゃん。今日はまだ終わってないでしょん。」
「え?」
「だからあ、トリックオアトリートっ。」

ニコニコっとレイが手を差し出して言った。

「ちょ、待て。何で今更?もう菓子なんて残ってるわけねーだろっ!?何でもっと早く言ってくんねーの?」

自分からすら嫌なのかと思ってたくらいだから、そう言ってくれるのは嬉しいが、すでに菓子は上げたり食べたりして、もうない。

「へえ?じゃあ、無条件でトリックってことだねん?」

レイの瞳が妖しく光った。

「てってめえっ。」

こいつ、絶対、これ、わざとだっ。

イチはじりじりと後退した。
レイは相変わらずニッコリとしているが、目が・・・目がマジだ。

「あれん、だめだよん、逃げようとしちゃー。これはルールなんだからねん。お菓子がないなら・・・いたずらでしょ・・・?」

いたずら・・・。いったい何をする気だっ!?
少しも侮れないレイだけにイチは戦々恐々とした。

「やだん、イッちゃんたらー、そんなにビクビクしちゃってん。もうレイドキドキしちゃう。まるで追い詰められたウサギちゃんねん。」
「うさ・・・。い、いたずらって・・・お前、何する気なんだよ・・・。」

ビクビクし、少し涙目になりながら恐る恐るイチは聞いた。

「あは。怖がらないでん。そんな酷いことしないよん。でもおーレイ、口に出してなんて言えないっ。いつもより激しくだなんてん。」

キャッと手で頬をおさえながら恥らうように言う吸血鬼。

「っっっおっおまっ・・・マジで何する気なんだよっ。」

いたずらと聞いて普通に落とし穴や落書き的な発想しかなかったイチに、今あらたな現実がつきつけられようとしていた。

やばい、これはルール無視して逃げるか!?
イチは涙目で赤くなりながらちろっとレイの向こう側をうかがった。

「んー、だめだよんイッちゃん?・・・逃がさないから・・・。」

ハロウィン・・・。それははびこる霊や化物に対抗する為に始まった儀式。

「ギャーっっっ」
外は三日月。ハロウィンの夜らしく、悲痛な叫び声がその夜を包んだ。