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レイ・イチ ~けったいなお人は好きですか~

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酔っ払い



「最悪・・・」

珍しくレイがぶすっとした顔でつぶやいた。

ここは酒場。

イチもよくここでたむろしていたし、よく酒のあてを食べていたりしたので、てっきり酒もいける口なのかと思っていた。

まあ確かに未成年だが、別にここでは禁止されているわけでもないし、たまには一緒にお酒を飲むのも悪くないかと珍しく普通な考えで、レイはイチと酒場にやってきて、酒を注文したのだった。

そういえばレオナが、いいのかい?といった顔をしていた。
その時は意味がわからなかったが、あれは、飲んだことのないイチに酒を飲ませてもいいのかという意味だったのだろう。

そのイチだが。

「ねーもっと飲もうよー。」

ニコニコと近くの奴に声をかけて楽しくはしゃいでいるところであった。

「最悪って、何が。」

近くにいたフリックがレイに聞いた。

「だって、そうじゃない?まさかイッちゃん、お酒弱いとは思わなかったよ。あんなによくここに来てたし、酒のあてもよく食べてたしー。こんな軽いお酒ほんの1杯も飲んでないのにあんなに酔うなんて、僕思いもしたかったよ。」
「ああ、あいつな。そういやそうだな。でもよー、確かに今まであいつが実際飲んでるとこは俺も見たことなかったぜ?」

ビクトールが勢いよく酒を流し込みながら言った。

「でもなんでそれが最悪なんだ?お前ならこれ幸いと・・・」
「フリック?いい度胸ねん。」
「い、いや、ごほごほ。」
「まあ、いいけど。だってん、あんな酔っぱらって可愛くなっちゃったイッちゃん、誰にも見せたくなかったよ。こうなるって知ってたら、こんなとこで酒なんか飲ませないのにい。」

ああ、そうだろうとも、そういう理由だとは思った、と腐れ縁2人はひそかに思った。
もちろん黙ってはいたが。

「ちょっと、イッちゃん。そんなとこでからまないの。」
「ふえ?あーレイ。えへへ、レイ、もっと飲もうぜー。」

レイがイチを連れ戻しに来たら、イチはふにゃっとレイに笑いかけた。

・・・普段絶対拝めない顔だ。
レイはとりあえずイチを自分のとなりに座らせる。

「ねえ、イッちゃん。今後一切お酒は禁止だからね?どうしても飲みたい時は、部屋でレイがいる時に飲むこと。万が一何かの拍子で飲む事があっても、絶対他の男の前では飲まない事。分かった?」
「えー、らんで(何で)?」
「何ででも。絶対だからね、分かった?」

イチは酔っぱらいつつも、いつものふざけた口調よりはいくばくか真剣なレイに押されて、あまり意味がわからないままうなずいた。

「分かったー。ね?あーアニタァ。えへへ、一緒に飲も?」

イチはやってきたアニタを見つけてニッコリ声をかけた。
まあ、アニタなら女性だし、大丈夫か、とレイは思った。

可愛く酔うイチを誰にも見せたくはないけども、こんなにイチが楽しそうなんだからもう少しここにいてもいいか、とぼんやり酒を飲みながら考える。
結局はレイとてイチに甘い。

「そういえばレイがここで飲むのは久しぶりじゃねえかあ?」

ビクトールが相変わらずガブガブと飲みながら聞く。

「ん?まあねー。ここにはイチに会いにきてるだけだもん。イチがここで飲んでないのに僕が一人で飲むわけないでしょ?戦争に出かけちゃってる時に運悪く来たとか、そんな時しか飲まないよん。」

イチに会いに来ただけだってのはまあ、知ってるけど・・・戦争に出かけるですか。
ちょっと買い物にくらいの気軽さで言ってのけやがった、とまたもや腐れ縁達はひそかに思うがもちろん口には出さない。

「たまにはいいじゃないか?あいつだって忙しいんだし。」
「まあそうだけどね。」

3人でたわいもない会話をしつつ酒を飲む。
たまにはこいつらと飲むのも悪くはないけど・・・

でもねえ、とレイは考える。
普段へらへらとしているレイだが、顔のつくりがとてつもなくいい。そのレイが中身はさておき真剣に物事を考えている様子は誰が見てもうっとりと見とれるものであった。そう、中身はさておき。

すさまじく見とれる様子で考えていること。
まずは今後は絶対イチに酒を飲ませないが、自分の前だけでは飲んでもらうのも悪くないな、だとか、こういった状態になったイチを、いかにお持ち帰りして楽しもうか、など、ろくでもないことであった。

ふとイチを見ると何やらイチがいるところに人だかり。
やはりイチは人気者のようである。でも。

気になりレイはイチのもとに行った。

「ねーらからさあ、こうすればいいんらと思ってえー。」

ますます呂律があやしくなっているイチは、頬を染め、目は潤み、トロンとした様子で机に両肘をたてて、そこに顎をのせている。
その様子はなんとも可愛らしく、また妙な色気を醸し出している。

「イチ。そろそろ出ようか?」

ニッコリと言うレイ。

しかしその顔からは黒いものしかうかがえない。
周りにいた男どもはずさっと後ずさりをした。

一緒に飲んでいたアニタはため息をつきながらも、イチに、そろそろやめておきな、と声をかける。

「えーらんでーもっと飲むうー。」
「だーめ。ほら、イッちゃん。行くよ。」

レイはニッコリしたままイチの両脇に手をやりそのまま立たせる。
すでにイチはふらふらしている。
レイは、よっと声をかけてそんなイチを抱えた。

そう。お姫様だっこ。
普段のイチなら、ぜったい真っ赤になって怒りまくることであろう。

しかし酔っぱらっているイチ。
ニヘーっと笑って大人しく抱かれるままであった。

「・・・絶対僕がいないとこでは飲ませられないね・・・。」

ぼそっとつぶやくと、レイは皆が見守る中、酒場をあとにした。

もちろん翌日は、イチはあまりの頭痛に悩まされ、会議も仕事もままならず、レイに言われなくとも絶対今後は酒は飲まないでおこうと誓ったらしい。

ただイチにとって幸いなことにお姫様だっこの件はまったく覚えていない様子であった。