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レイ・イチ ~けったいなお人は好きですか~

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生誕祭を楽しもう



「要はクリスマスって花見みたいに、ツリーを鑑賞しながらご馳走を食うって事なんだろ?」
「うーん・・・確かにそうでもあるんだけどん・・・それじゃあ風情も色気もあったもんじゃないよねん。」

イチが言った事にレイは苦笑いをしながら、この世界ではないどこかの誰かが誕生した日で、それを祝うという御伽噺だとか、空想の太った赤いおじいさんが子供にプレゼントを配る御伽噺だとかを語ってきかせ、この日は家族や恋人達の日でもあるんだと付け足した。

「・・・なんだか余計訳分からねえ。とりあえず誰かの誕生日を勝手に祝いつつ、コスプレしたじいさんが不法侵入して勝手に置き土産をしていくなか、家族やカップルが楽しむ、と・・・。」
「分からないまままとめられるとすごく怪しげなイベントだねん。あは、さすがイッちゃん、可愛いねん。」

何でそうなるっっとその場にいる全員が心で突っ込んだ。

今日は現在の戦況報告の為、普段参加しない者も多く会議に出ていた。
そして話し合いが終わったのを機に、イチが丁度いいからと皆にクリスマス会をしようと思うと告げた。
シュウには会議前に既に許可を貰っている辺り、真面目なイチらしかった。
だがイチ同様、あまりクリスマスという行事に詳しくない者もいた為、冒頭のような話になっていた。

「まあいいじゃねえか、とりあえずその日は飲んで食っての大騒ぎって事でよ。」
「ビクトール殿はそればかりだな。だが子供達にプレゼントを配るというのはいい話だと思う。」

真面目な青騎士、マイクロトフが言った。
その後をフェミニストな赤騎士、カミューが続けた。

「そうですねえ。それに、恋人達の日というのも何だかロマンチックですね。」
「お、そういえばさ、宿り木って知ってるか?」

レイと同じトラン出身のシーナが思い出したように言った。

なんだそれという呟きがところどころで聞こえた。
クリスマス自体をあまり知らない者が多いので、そんな事知る者も少なかった。

「これも御伽噺からきてんだけどさあ、その宿り木がある下にいる人にはキスしてもいいって慣わしなんだよな。怒っちゃだめなんだよ。」

少しシーンとした後でどよめきが生じた。
大賛成する者、憤慨する者などさまざまだった。

「まあとりあえず今日のところはここまでだ。内容についてはまた後日つめるということにしておけ。」

きりがないと判断したシュウの一声で本日の会議は終了した。

「何か結局よく分からないままだったな。」

いい時間になっていた為昼食に向かいながらイチが言った。
後ろでルックがボソッとレイに言った。

「別にツリーを見ながら食事するっていう最初の案で良かったじゃないか・・・。何で概要まで説明してるわけ、あんた。」
「えー?だってん。僕的にはやっぱりイッちゃんにはちゃんとクリスマスを知っておいてもらいたいなんって。」
「あんた的な意見なんて知らないよ。そんならあんたら2人だけですればいいだろ。ただでさえ祭り好きばかりだってのに鬱陶しい。」
「あのイッちゃんが皆でワイワイやりたがらないと思うー?僕だって2人きりでしたかったもん。」
「・・・まあね・・・。まったく・・・。解放軍時代みたいに結局飲み食いだけで終わってくれればいいけどね・・・。」
「ほんとあの時は色気もへったくれもなかったもんねえ。かといって僕も特定の子と過ごしたいとは思わなかったしねん。・・・ああ、それにしてもシーナってばよけいな事ばかり知ってるよねん。」

ため息をつきつつ諦め境地のルックに、残念そうにいいながらレイはふと思い出しむくれた。

「・・・ああ、さっきの。どうしたんだよ?あんたこそそんなの好きそうじゃないか。」
「僕は宿り木なんかなくったってイッちゃんといちゃいちゃするもん。あんなのあったらかえって気が気じゃないよ。」

ああそうですか、と呆れたようにルックは横目でレイを見た。

「おい、お前ら飯食わねえの?」

レストランの入り口からイチが声を掛けた。

クリスマスについてはその後もう一度会議の場で話し合い次のように決まった。

・サンタが子供達にプレゼントを配る・・・城のホールを開放し、お菓子詰め合わせをサンタ役が、貰いに来た子供(大人も可)に渡す。

・恋人達のムード満点スペースを作る・・・レストランを貸切り、それなりの雰囲気を作り(宿り木あり)、カップルに開放する。

・家族で楽しむ・・・舞台で手品やダンスショー等を行い、それをその時だけ飲食持参可にして鑑賞(家族以外も可)。

・おおいに飲み食いを楽しむ・・・酒場でどうぞ(クリスマス特別メニューあり)。

サンタ役や施設の従業は、皆が楽しめるように交代制(希望者募る)でする事に決まった。
宿り木はいたるところにあればなあと残念がる一部の奴がいたが、それは却下となった。
シュウの指示もあり、飲食は基本的に有料となった。

「収益は必要だし、ただにすれば酒蔵を空にされかねないからな。」

チェッと残念がるビクトールやアマダなどをチラッと見てシュウが言った。

「ようし、じゃ、そういうことでなっ。あ、俺裏方担当でいいから。」

イチはニコニコと手を挙げた。
チャコが不思議そうに聞いた。

「え、イチが?また何で?お前楽しみにしてたじゃねえか?」
「楽しみだよ。でも裏方だってめったに経験出来ねえじゃねえか。サンタとかにもなってみてえし、お店の従業員とかもやってみてえし、何より皆が楽しそうにしてる様子が見られるからな。」

横でシーナがほんとお前って真面目でいい奴よのう、と涙を拭くふりをしながら言っている。

「えー、イッちゃんがずっといないならレイ悲しい。レイも裏方でいい。」

反対にお前の動機は不純だとシーナが言うと、レイはニッコリしながらどの口が言ってるのかなん、とシーナの頬をつねって泣かせていた。

「何かあんたが大人しくて不気味なんだけど。」

後でルックが言った。

「酷い事言うねん。そりゃイッちゃんとレストランとかでラブラブしたいけどん、あの子が行ってくれるとはさすがの僕も思わないよん。」
「へえ、殊勝だね。」
「うふ、その代わり裏方でずっと一緒で、終わった後にイッちゃん貸切するつもりだからん。自宅に拉致するから、ルック?協力よろしくねん。」
「ちょ、何それ!?何で僕が!?第一聞いてないんだけど!?」

だから今言ってるんでしょ、とニコニコ顔のレイだが目が笑っておらず有無を言わさない様子であった。

結局ルックはげんなりしながらもそれを実行させられた。

当日裏方を十二分に満喫しご満悦のイチは訳が分からないままレイの自宅に拉致され、ご満悦のレイに満喫させられる羽目になる。