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レイ・イチ ~けったいなお人は好きですか~

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そんな事情



「あのう・・・これ、作ってみたんで・・・良かったら食べて下さい・・・。」
「ねえ、今度一緒に湖行かない?」
「えーと、そのーい、一緒にお食事でも・・・。」
「今晩、あなた暇?」

さまざまな女性が今日も元英雄に声を掛けている。
かの英雄はその度にこやかに対応していた。

「あーどうもありがとー。え?ああ、うん、いいよん。あーその日はねー・・・」
「・・・くっそー。なんであいつばっかモテんだよ。」

その光景を忌々しげに見ながらシーナが言った。

「あーまあ今に始まった事じゃねえ。諦めろ。」
「あいつの体からなんか出てんだろ、多分。女性を惹き付ける何かがさ。」

腐れ縁2人が諭すように言った。

「・・・この間男の子からも言い寄られてたぜ?あいつ・・・。まあ相変わらずはっきりきっぱりお断りしてたがな。」
「「あー・・・。」」

シーナが呆れたように言うと、2人もははは・・・と力なく笑った。

「どうも何か出てんなら、有効なのは女だけじゃねえんだろな。くそっ分けて欲しいぜ。まあ男には来て欲しくないけどさあ。」
「・・・何か出すのは勝手だけどな、苦情が俺んとこくんだよ。」
「のわっ、イチっ。いつの間にいたんだ!?」

忌々しげに言い放つイチがいつの間にかそばにいて、シーナは仰け反った。
腐れ縁2人も驚いている。

「なんだよ、いちゃ悪いか?」
「いや、そんな事はねえけど。って苦情ってなんだあ?」

ビクトールがイチに聞いた。

「女とられただの、浮気されただの、男の敵だ、だのよくまあこのご時世にそんなのん気なって事を言ったり投書したりしてくるわけですよ。」

イチが情けなそうに茶化して言った。
それからため息をついて続ける。

「無視してたんだけどちょっと鬱陶しくなってきた。だからちょっと言っておこうかと。」
「お、やるねえイチ。言っちゃえ言っちゃえー。」
「・・・お前がわざわざする事でもないと思うがな・・・。それに言っても無駄のような・・・。」
「あー、確かに。あいつが今までそんなん聞いた例がねえし、ましてやイチが言おうもんならなあ・・・。」

シーナ、フリック、ビクトールが言うのを聞いていたが、やってみないと分からねえだろと、イチは1人になったレイのところへ行った。
ていうかましてや俺が言ったら何だってんだよとブツブツ言いながら。

3人はまあイチだし、レイが何か危害を加える訳もないし(イチ的には危機を感じることはあるだろうが・・・)放っておいても大丈夫だろうとそれぞれナンパに酒場にと散っていった。

「おい変態色魔。」
「あ、イッちゃん、・・・ていうか何その呼び名ー。酷いなー。レイって呼んでー?」
「うるせ。お前なー、その来るもの拒まずの態度、どうにかしろよ。鬱陶しいんだよ。」
「?・・・んー?あ、ああ。女の子達のこと?やっだイッちゃんったらーヤキモチやいてくれてんのん?」
「ヤッ・・・って誰がやくんだよっ。女とられたとか、苦情が山のように来てんだよ、お前の事でな。」
「えー?情けないなー。ていうかレイは別に奪ったりとかしてないよん。話しかけられたらイッちゃんだって答えるでしょん。」
「それだけじゃねえからこうやって俺がお前に言いにくる羽目になんじゃねえか。」
「えー。ひっどいなー?別にレイから何かしてる訳じゃないのにん。それにね、前は確かに来る者拒まずで誰とでも女の子が望むとおり相手してたけどー、今はなーんにも手え出してないんだからねー。そりゃお茶くらいはするかもだけどお。」

むう、とむくれるようにレイが言う。
変態と扱いつつも、今の言葉に嘘は感じられなかったイチは拍子抜けしたようにポカンとして言った。

「え?そうなのか?じゃあただの逆恨みかよ・・・。ほんっとバカバカしい・・・。っていうか何で何もしなくなったんだ?歳か?」
「何それ・・・。まだ21だってば。まあレイはある意味永遠の花の16歳なんだけどねん。」
「ああ、まあ、確かに・・・。で?何で?」

呆れたように呟いた後、コテンと首を傾げてイチは無邪気に聞いた。

「んー、そりゃあイッちゃんがいるから。」
「・・・は?」

指を口にあててニッコリと言ったレイを、イチはポカンと見た。

「だからあ、レイはイッちゃんだけだから、他はいらないかなーってねん。だからっていって話しかけられて無視する程冷たくないだけだよん。」

あんぐりとイチは口を開けていたが、聞き終わると顔をゲッと歪ませ赤らめる。

「っとにいい加減にしろよなっ。何でいつもそうやってふざけんだ!?」
「ええ、ふざけてないよん。レイはいつだって本気だってばん。実際誰にも手を出してないんだしー。ああ、レイの喋り方が伝わらない原因?切ないなー人当たり良くする為なのにイッちゃんには何言っても冗談に聞こえちゃうんだー。」

そりゃそうだろ、そんなヘラヘラした喋り方、どこをどうとったら真面目に聞こえんだ!?と呆れるイチだが、ふと表情が変わったレイから目が離せなくなった。
特にその中に捕らえられてしまいそうな紅い目に引き込まれる。

「・・・本気だから。本気でイチ、お前が好きだよ。俺の言った事も、ちゃんと信じてくれるお前がね。」
「え・・・」

イチは別人のようなレイに驚きつつも相変わらず目が離せなかった。

その紅い目が・・・どんどん近づいて・・・くる・・・。

気付けばイチは口づけられていた。

最初は触れたかどうかという風に、それからだんだん息苦しくなるほどに。

知らないうちに抱きしめられて。

脳みそが溶けてなくなってしまうんじゃないかと自分の中のどこかで感じながら。

レイの唇が完全に離れたとき、ふいになにか唇や体が寂しいような心もとなさを感じた。

だがようやく我に返ったイチはわなわなと震えだす。

レイがニッコリとする。

「あれん?どうしたのんイッちゃん?」
「ってってめえっーっ。なっ何しやがるっ。」

ひゅっとトンファーを振り上げるが、やはり空を切るだけで終わってしまう。
どんなに素早く技を繰り出そうがイチの息を上げるだけで、目の前のレイにはかすりもしない。
悔しいことにレイは息すら上がっておらず、相変わらずのん気な様子のままである。

「く・・・。何で当たりもしねんだ・・・。」

はあはあと肩で息をしながらイチは悔しそうに呟いた。
しかも今日はいつもより息が上がるのが早い。
心臓がドクンドクンと振動している。

「大丈夫ー?」
「くっ・・・。うるさいっ。」

膝に手をついて俯き、息を整える。
心臓がうるさい。

深呼吸を繰り返す。

「・・・あのー・・・」

その時また女性が一人レイに声を掛けた。
少し赤くなっておずおずといった感じである。

「なあにー?」
「これ、作りすぎちゃって・・・。良かったら食べて下さい。」
「あーどうもありがとん。」

女性が差し出したクッキーをレイはにこやかに受け取った。
じゃあ、とその女性は去っていった。

・・・またかよ、とイチは呆れる。
だが確かにレイから何かする訳ではなく、向こうから勝手にきてるだけだよなとも思った。

「・・・これどうしよっかなー、やっぱ土に返す?」
「は?何言ってんだよ。あの人お前にって。」