臨帝小ネタ集:11/11追加
就活事情
「臨也さんの事務所って採用基準とかあるんですか?」
「俺の気分…………何その目」
「いえなんでも」
「俺のとこで働きたいの?」
そういうわけでもないんですけど、と目を逸らす帝人に特別感情を動かされた様子もなく臨也は会話を続ける。
「まあそうだろうね。自分で作った組織もあるわけだし」
「あれは副業みたいなものですよ。ダラーズの内部にブルースクウェアは、もう必要ありませんから」
「だから外部に切り離して自分の手足にしていると。怖いねえ」
揶揄する言葉にも帝人はただ曖昧に笑ってみせた。
「もし僕が臨也さんの下で働きたいって言ったらどうします?」
「不採用」
「……悩みもしませんでしたね」
「君は味方にするより、状況次第で立場が変わる環境に置いといたほうが面白い」
テーブルの上のカップを手に取り紅茶を一口二口。その様子を、隣に座ったまま横目でちらちらと伺う帝人。隠しているつもりでその実あからさまな視線を臨也は気にもかけない。
「帝人君だってそう思うだろう? 完全に君の味方な俺なんてつまらなくて幻滅じゃないかい? 少なくとも俺は、いつだって俺の味方な君に用はないなあ」
「残念なことに同感です」
「残念なんだ」
「残念ですよ」
すぐ横にある肩にぽふっと顔を押し付けて帝人は言う。
「たまにはそんなのも、いいような気がしたので」
「ふうん」
帝人の頭の上に自分の頬を当ててぐりぐりと押しながら、どうということもなさそうにまた口を開く。
「でもさぁ、わざわざうちの事務所こなくてもお互い永久就職してるようなもんじゃない?」
力を抜いて柔らかく体を預けていた帝人がぎしりと固まり、そして沈黙。そんな反応に臨也の口元が歪む。
「あれ? 永久就職って君らの世代にはもう通じない?」
「いっいいえ解ります! 解ってますけ、ど」
顔を上げようとするものの、臨也が頭の上から自身の顔を押し当てているのでそれは叶わない。
「あの、それは、人ラブとか非日常とかそういった意味で……?」
「好きに解釈すれば」
「そういう言い方はずるいと思うんですが」
「今更だろ」
作品名:臨帝小ネタ集:11/11追加 作家名:ゆずき