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黒鳥 キョウ
黒鳥 キョウ
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黒猫のワルツ

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――黒猫のワルツ


首なし妖精の思い出話






新たな生を生きるのは、自分自身、思いがけず興味深いものだった。
新たな、と言っても死んだわけではない。

いや、正確には死んだのかもしれない。
しかし、肉体は朽ちた訳でも、腐敗し土へ還った訳でもない。

ただ、遺脱した存在へと昇華したということらしい。

熱弁を振るう人間の医者を前に、僕は内心ため息を漏らす。
詰まらない凡ミスをしたもんだ。
まあ、こんな出会いがあるから、つくづく長生きなんてしておくものだとも思うが。

言いたいことだけ言って医者は去っていった。
僕をケージに閉じ込めたまま。




私、セルティ・ストゥルルソンがその猫に出会ったのは、今から18年程前のこと。
故あって、岸谷家で暮らすことになった私が、まだまだ駆け出しの運び屋であった頃だ。

新羅と玄関口で一緒になって、帰宅したら、リビングにぽつんとプラスチックのケージがあったのだ。
そう、俗に言うペットを収容し持ち運ぶための"ケージ"だ。

なんで、そんなものがこんなところに?
私と新羅は顔を見合す。
(・・・といっても、私には首がないので、見合わせたとは厳密には言わないのだが。)
ケージの中には、予想に違わず一匹の生き物が入れられていた。

猫、だった。

ケージの中の猫は、大人しい。
真っ黒な毛並みに琥珀色の瞳の、一般的に言う黒猫がこちらをじっと見つめてくる。
・・・可愛い。

猫は窮屈そうにケージの扉を前足で押す。
開けろ、と訴えているような仕草に妙な人間臭さを感じつつ、私はケージを開ける。

『ああ、すみません。助かります。』
『いや、気にするな・・・・って、え!?』

それは懐かしい感覚での呼びかけで、うっかり私は素で答えてしまった。
しかし、すぐに驚きで猫を(首があったらと言う前提がつくが)凝視する。
今、私に呼びかけたのは、ケージから出てきた猫だ。
音を介した言葉ではない、声。
それは、人間には発せない類の声だ。

「・・・・・・・・・猫が喋った・・・・・・。」

その猫の声は新羅にも聞こえたらしく、ぽかんと猫を凝視した。
猫はこちらの意に介さず、悠然と歩きソファに飛び移る。
長い真っ黒な尾がゆらゆら揺れるのを見て、はたと気がついた。

猫の尾は2本あったのだ。
根本からきっかりと分かれた尾。

これは普通の猫ではない。
私側の生き物なんだ、この猫は。

『くぅっ・・・・・ん。はあ、身体が痛い。猫は狭いところは得意ですが、閉じ込められるのは不得意なんですよ。』

猫はぐっと身体を伸ばし、ぶるぶるっと身震いした。
不満を滲ませた声色だけど、表情は変わらない。
猫だからかな?
・・・それにしても、猫は自由気ままってよく言うけど、本当だ。
猫は勝手にソファに座って、毛づくろいを始めた。

『あの、お前は何でここに?というか何でケージの中に?』
『岸谷氏に閉じ込められてたんです。』
「父さんが?」

新羅は私と猫を交互に見ていたが、猫が新羅の父親の事を話したのを聞いて首を傾げる。
まあ、無理もない。
彼は一風(どころか相当)変わっているし、少なくとも愛玩動物を飼うような人間ではない。

『ええ、まあ。ちょっと、人から猫に戻るのを見られて・・・』
「人に!?え、化けるの?化け猫!?」

興味津々と新羅は猫に近づく。
こうして、好奇心で目を輝かせている姿は子供らしくて見ている私としては和む。
しかし、猫は違うらしい。
現に、猫はちょっと引いてる。
きっと、それは猫だからそう感じるんだろうな。
公園とかで見かける野良猫は、人間そのものにそもそも近寄らないが、子供には絶対と言っていいほど近寄らない。
好奇心=遠慮の無さの子供にモミクチャにされるのは遠慮したいって所だろう。
確かに猫にしてみれば迷惑な話だよな・・・うん。

『化け猫じゃないです。猫又っていうんですよ。』
「へえ!猫又かあ・・・。」

しかし、相手は普通の猫じゃない。
逃げる様子も無く、猫は訂正した。

『そちらは?感じからして・・・妖精か何かって所ですよね?』
「よくわかったね!!セルティはデュラハン!!アイルランドの妖精だよ。」

猫の琥珀の瞳がじっと私に据えられる。
ヘルメットの内側まで見透かされるようで、何となく・・・・身じろきしてしまう。

『それはまた遠いところから・・・日本にようこそ、と日本の妖怪の一種として言うべきですかね?』

猫は小首を傾げる。
結構真剣ぽい声に、新羅は「もう2年も日本に居るから今更じゃない?」と普通に返した。
・・・・子供は順応力に富んでいるんだな。
私は、ヘルメットを外す。
だって、家の中だし、相手は猫又。
まあ、ある意味同族みたいなものだし、いいかな。

『・・・・・・・!』

猫はゆらん、と2本の尾を揺らす。
きらきらした琥珀の目は、好奇心と感動(だと思う、多分)があった。

『どうかしたか?やっぱり、驚いたか?』
『驚いたと言うか何と言うか・・・。どう言っていいのか分かりませんが、感動していると思います。』
『そっか・・・。』

猫はじっと私を見詰める。
でも、その視線に嫌悪は感じない。

「そういえば、君なんていうの?あ、僕は新羅。岸谷新羅。彼女はセルティ。」
『セルティ・ストゥルルソンだ。』

やや、今更な気がしたけど、自己紹介した。
猫は、ご丁寧にどうも、と人間臭い前置きをした。

『僕は帝人。姓は無いですが。』

その日から、帝人という猫又が我が家に加わった。
はじめはどうなる事やら、と思っていたが帝人は猫又なだけあってまるで手のかからない猫だった。
それに、動物のいる生活というのは良いものだ。
だって、和む。
膝に抱いて背中を撫でていると、癒しになるんだ。
アニマルテラピーって妖精にも有効なんだと私は知った。
新羅も帝人のように理知のある生き物相手なので、退屈しないらしく楽しそうだった。

しかし、1年後。
帝人は自由を求め家を出た。

『猫は束縛が嫌いなんです。ああ、解剖は更に嫌いですが。』

と、新羅の父親に捨て台詞を吐いて。






◆後書き◆
とりあえず第2話です。
セルティと新羅との出会いです。
闇夫婦好きだ・・・・!!まだこの段階だと夫婦感0ですが。
次は喧嘩人形のターンです。



作品名:黒猫のワルツ 作家名:黒鳥 キョウ