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フェイクラヴァーズ

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 朝比奈と親しい奥沼というと、園芸部の部長だった奥沼美里だろう。しかし彼女は日野のクラスメートではない。屋上にいた者達の中に彼女の知り合いがいたのかもしれないが、それにしてもなんと情報が早いのか。
「いちゃいちゃはしてない。昨日親切にした礼に、弁当をご馳走になっただけだ」
「十分いちゃいちゃしてるじゃないか。しかし、それならまだ発展途上なんだな」
「途上もなにも、これきりだよ。向こうだって感謝の気持ちを形にしたかっただけだろ。何だその残念そうな顔は」
「いや……せっかく『あの優等生Hと謎の美少女の熱愛発覚!』って見出しで記事が書けると思ったのにな」
「おいおい、そんなゴシップ扱うなよ。だから新聞部の記事はガセばっかりだって陰口叩かれるんだぞ」
「冗談だよ。さて、文化祭用に社会派ネタをまとめますか」
 これ以上日野を弄っても仕方ないと思ったのか、朝比奈はあっさり引き下がって作業を再開した。もっとも、実際に働いているのは御厨や坂上・倉田をはじめとする下級生達なのだが。
 
 ──今朝もいつもと同じような手紙が下駄箱に入っていた。中身も見ずに破り捨てたいのはやまやまだが、敵を知るためには一応目を通しておかざるを得ない。周りに人がいる場所では憚られるので休み時間にトイレで開封したところ、特に変わった記述は無かったものの、相変わらずの不気味な筆致に精神的なダメージを受けた。
 
 あと少しの辛抱だ。そう自分に言い聞かせながら、日野もまた作業に加わった。
作品名:フェイクラヴァーズ 作家名:_ 消