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みとなんこ@紺
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それは優しいだけのうた

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魔が差す、ってのは便利な言葉なんだぜ?
ホントにその時は自分の意思で本能のままに動いたくせに、越えちゃならない一線を越えて後悔する奴はみな言うのさ。
「『あの時自分はどうかしてたんだ』、『逆らいがたい衝動に振り回されて、気がついたら』、『悪魔に誘惑されたんだ。自分は悪くない』とね。便利なもんだ」

――――今、お前が心からそうしたいと望んでるのなら、かまわないだろ。ほら、

オレはそうやって少し背中を押してやっただけ。
「あんたやあいつがやってることと大差ないはずなんだがな?」
どうしてこうも結果は違うのかねぇ、と大仰な仕草で肩を竦めてみせる。


それには答えずに、もう一人の遊戯は子供に歩みよると髪を撫でるようにそっと手を滑らせた。
意識を寄せる。
黒く塗りつぶされそうな魂の光の向こう、無理に押し殺し、忘れようとしている記憶をそっと揺り起こす。

不器用にそっと撫でてくれる、父親の大きな手を。手を引いてくれる掌の温かさを。
思い出せ。…まだ、心を閉ざすには早すぎる。

徐々に大きく暗く響きだしていた虚ろな声が、急に小さくなっていく。
バクラはそれを邪魔するでもなく見守って、つまらねぇの、と肩を竦めた。
「…アンタは本当に相変わらずアレだな。厳しいんだか何だかよく判んねぇな」
言葉で時を紡ぐ時には、何の色も返さない冷静な観察者の目をするくせに。
こうして声もなく泣く者は、ほんの少し背を押して光の下に返してやる。
バクラが彼を、《名もなき王》と呼ばれていた彼を知った時からずっとだ。

「――――どうしてオレに聞こえる事がアイツには聞こえないんだろうな?なぁ、王サマ。アンタは何故か知ってるかい?」

ほんの僅かな間に子供の抱えた“痛み”を少しだけ癒してやった彼の背に、バクラは小さく問いかけた。

「・・・さぁな。オレにもお前の聞いているものは聞こえない」

答えを期待してない口調で投げられた問いを返されたことにか、彼は僅かに目を見開くとやがてニヤリ、と皮肉げに口元を歪めた。



「ウソツキ」