それは優しいだけのうた
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オレたちは色のない世界に在る。
地を見下ろす。
昔あった、豊穣を約束する黒の大地は今はなく、濃い影を落とすアスファルトが大地を隠す。
いつか見た、あの白い乾いた地とどちらが良かっただろうか。
どこからが自分のはじまりなのか、それももう判らなくなった。
ただ目覚めの瞬間から、はっきりと判るのはただ一つ。
言葉を集め、歴史を証言し、人を見守る。
オレたち自体が人の歴史を語る言葉となる。
――――それでいい。
霊でいよう。言葉でいよう。
ここに自分があるのならば、そこにも意味はあるはずだから。
このあやふやな存在である自分たちにしか与えられない意味が。
作品名:それは優しいだけのうた 作家名:みとなんこ@紺