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みとなんこ@紺
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それは優しいだけのうた

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時々、本当に希な話だが、子供じゃなくても遊戯たち天使の存在を感じ取れる人がいる。
波長が合うんだかなんだか理屈は判らないけれど、彼らは子供たちのように姿をみることが出来なくても、その存在を感じ取ることはできた。
最近この街へやってきた城之内もそんな一人だ。

『・・・を?』

トーストを齧りながら丁度靴を履きかけた所で、ふ、と最近慣れてしまった気配を近くに感じた、ような気がした。
『・・・また、来たのか?』
辺りを見回しても、誰もいない。
だがある種の確信を持って声を掛けると、答えるようにチン、と小さくドアの脇のベルが鳴った。
『〜〜〜〜〜っていうか怖ぇからそれやめろ!』
ギャー!と毎回律儀に驚いている城之内は、目に見えない遊戯たちの存在は信じるくせに、こういうのには弱いらしい。
「・・・相変わらずだねぇ、城之内くん」
「泪目だな。しかしオレたちは怖くないのか?」
まんま幽霊みたいなものだと思うんだが。
さぁ、どうなんだろうね?
と2人でのんびり観察していると、ああ、こんな事してるヒマねーんだよ。時間遅れちまうっての!、と彼はスニーカーを引っ掛けて慌てて飛び出していった。


「…相変わらず働き者だな」
「今いくつめなんだろうね、掛け持ち」
ひょこ、と扉をすり抜けて、がんごんごんごんと螺旋階段を豪快に駆け下りていく背の行く先を見送る。
裏手に回って、駐輪場へ。
「・・・自転車みたいだな」
「行こっか」
トン、と手すりを蹴って宙に飛び出し、ちょうど走り出そうとしている彼の上へ飛び降りた。
『おわ?…って、お前ら着いてくる気なのか?・・・しやーねぇなぁ…』
「お邪魔しまーす」
「・・・よ、と。しかし城之内くんは何をそんなに急いでるんだ?」
「うん?・・・えーと、なんか寝坊しちゃっただけみたいだよ」
ペタ、と背中に触れてみて、遊戯が答えた。
そうか、じゃ、遠慮なくと。短く返して、もう一人の遊戯は、半身の背中に背を預けて、反対方向に流れていく景色に目をやった。

最初に出会った頃からこの位置は変わらない。
今は何も積んではいないが、いつもは籠一杯の新聞を積んで、彼の担当区域までジャコジャコと勢いよくペダルを踏んで街を駈ける自転車に三人乗り。荷台に括られた商売道具の新聞には悪いが、2人で荷台を半分こにして。
最近は何かを悟ったのか、姿も見えなければ、声も聞こえない遊戯たちを相手に、彼は取り留めのない、色々な話をしてくれる。

新聞配達のバイトってさ。朝も早いし色々キツイけどこれがけっこー嫌いじゃない。
馴染みのパン屋のおっちゃんが差し入れくれんだよ。昨日の残りとかが多いけど、時々焼きたてのもくれんだぜ。しかもお得な事に牛乳のおまけ付き。
ああ、スーパーでおばちゃんたちに混じりながら食材選びとかも意外と、好きだ。
「オレ、ダチのダチんトコ居候してんだけど、そいつがまた不規則ぶっちぎりの生活でよ。平気で何食でも抜きやがるくせに、ジャンクフードでごまかそーとする辺り、どーしよーもねぇよな。・・・まぁ、あいつと一緒んなって食わせてるうちに料理、得意になったんだよなぁ」
そこまで言っておいて、彼はしみじみと所帯じみてるよなぁ。オレ、まだ若い筈なんだけど。等と深々と溜め息をついたりする。
それは本当に他愛もない話だったけれども、乱暴な言葉遣いの影にある労りや優しさを、遊戯はひどく心地良いものとして受け取った。
少しだけ触れた城之内の心の光は、とてもきれいで、不思議とどこか懐かしい。
少し眩いほどのその光から、彼らは少し目を伏せた。