夜のサイクリング
玄関前のスッタモンダで思いのほか時間を取られたのか、既に終電もなくなり、人通りも途絶えた道をニールとアレルヤは歩いた。
「・・・なぁ、アレルヤ。ちょっと聞いていいか?」
「・・・なに?」
「お前さんさぁ・・・、自転車で来てるのに、なんで乗らねぇんだ?」
いつもは徒歩のアレルヤが、今日に限って自転車を、しかも乗らずに手で押しながら来ているのだ。
「・・・え?僕だけ乗ったら、ニールは走って家まで帰らないといけなくなるじゃない」
「いやいやいやいや・・・、そーじゃなくって!二ケツにすりゃいいだろう?乗って行った方が早く家に着くし、お前さんも早く家に帰れる」
「大丈夫。帰りは爆走するから。・・・それに」
にっこりと微笑みながら、自転車の後ろに乗っていいのは、ハレルヤだけって決めてるんだ、とニールを乗車拒否したのだから徹底している。
「はぁ~、さいですか・・・」
「・・・でも本当はね、今すぐにでも帰りたいんだ・・・」
「んなら帰っていいぜ?俺だったらもう出戻ったりしねぇし・・・」
そう言うニールの顔をマジマジと見つめたアレルヤは、信用してないからやっぱり家まで送るよ、とさらりと返事を寄越した。
「信用されてねぇなぁ・・・俺って」
「しょうがないよ、それだけのことをしたんだから」
「・・・ほんっと、お前さん、ハレルヤのこととなると容赦ねぇなぁ~」
「ふふっ・・・、だってハレルヤは、僕にとって唯一の肉親だもの」
その台詞を言われると、ニールはもう何も言い返すことが出来なくなる。
不慮の事故で両親が他界し、二人っきりになったアレルヤとハレルヤの間には、他人が入り込めない深い絆がある。
ニールはそれを羨ましくも感じたり、酷く寂しいとも感じて胸が痛くなるのだ。