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恋が素敵だなんて誰が言ったんだ

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「臨也さん!」

人ごみの中だというのに、クリアなほどその声は俺の脳内に響いた。
驚いて目を見張る俺の前で、あのノミ蟲があいつに近づいていき笑いかける。

(・・・・・ッッッ)

頭の中が一瞬で焼き切れた。
よりにもよってあいつの側にノミ蟲がいる。
怒りで手の中にあったタバコを握り潰した。
爆発した感情のまま駆け出そうとした時、視界の中のあいつが笑った。

「・・・・。」

笑った。
それは誰が見ても嬉しい感情をそのまま表した優しい笑顔だった。
何を話しているのかは分からない。
ただ、それが作り物でも裏があるものでもなく、あいつがただ臨也を慕っていることだけは明らかな笑顔だった。

「・・・っっ」

身体が固まる。
暴発した怒りと押さえ込む感情がせめぎあい、全身が震えた。
歯を食いしばり、手の中のタバコが原型を無くすまで強く握り締める。
頭の中はめちゃくちゃだった。
何で。どうして。よりにもよって臨也と。なんで。俺が。どうして。俺の方が。
獣の咆哮のような叫びが頭の中を幾重にも響き渡る。
それは今まで誰にも見つからないように、密かに育んでいた片恋の断末魔だった。