二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

gambling game

INDEX|13ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 

「それなら勘違いと言い換えましょうか。以前にも似たような事を言いましたが、僕からの告白について考えているうちに、自分までそういった感情を抱いているかのような錯覚を起こしてしまったんですよ」
「勘違いなわけあるか」
「いえ、勘違いです」
 吐き捨てるように否定の言葉を投げる。 ここにきてまだ粘るか、古泉。俺達と類似しているらしい漫画なら、おそらくは既に両者はハッピーエンドの階段を登ってるところだぞ。
「何故断言できる」
「それが神の望まぬ事態だからですよ」
 また神様か。で、何をハルヒが望まないって?
「わからないんですか? 貴方が特定の誰かと交際なさる事ですよ。去年の夏の事をお忘れですか?」
 古泉が示している夏の事とは、俺が二度目の閉鎖空間へ訪れた時の話だろう。あのインパクトは忘れたくても忘れられるもんじゃない。
「あれは朝比奈さんと仲良くしていらっしゃる貴方を見て、涼宮さんが……失礼ながら、嫉妬の感情を覚えて起こしたものだと僕は解釈しています。おそらく朝比奈さんが僕に入れ替わったとしても同じ事でしょう。僕は、同じ愚をおかすつもりにはなれません」
 嫉妬ねえ。ハルヒには似合わない単語だな。あいつが他人を妬むなんてのは全く想像がつかない。寧ろ他の奴らの妬みの対象というのならわかるんだけどな。
 で、それがどうした?
「どうしたって、僕の話を聞いていましたか?」
 古泉が僅かに苛立った様子で尋ねてくる。
 流石にイケメンが凄むと迫力が出るな。だが古泉にびびっていてはハルヒのお守りなんてしてられん。
「ああ、面倒だが一応聞いてはやったよ。だから、それがどうしたんだって聞いたんだろうが」
「だから、涼宮さんが望んでいない事態なのだから、貴方の感情は勘違いだと言ったんですよ」
「そこが間違ってるんだ」
 びしっと指を突きつけてやる。脳裏に幼稚園時代に恋をした保母さんの『キョン君、人様に指をつきつけちゃ駄目よ』という優しい声が過ぎったが、この際無視させていただいた。すみません、先生。以後は気をつけますので。
「ハルヒが望んでないなんて事がお前に解るか。確かに去年はそんな妙ちくりんな事があったかもしれんが、ハルヒだって変わってきてる。それはお前だって言ってただろ」
「ええ、ですが」
「ですがもかかしもない」
 まだごねようとする古泉の言葉を切って捨てる。我ながら涙が出るほど古い言い回しだな。
「大体、お前は人様の感情に対して頭ごなしに勘違いだなんだって失礼だと思わんのか。お前の言葉を借りるとだな、俺だって健全な青少年であり恋愛ぐらいはするんだよ」
 古泉ほど開き直る事ができないので、性欲云々はここでは置いておかせてもらうぞ。
 半ば告白に近いことを言ってしまったことに気付いたのは、発言してから数秒した後だった。羞恥心による後悔の念がじわじわと浮かんでくる。確かにそれを告げることを目的に呼びはしたが、もっとこう、穏やかにスマートに伝えるつもりだったんだが。
「…………それでは貴方、本当に……?」
 信じられませんと顔にでっかく書いた古泉が、小さすぎて会話に集中してなきゃ拾えんような声で尋ねてくる。
「解ってて確認するの止めろ」
 半ば「俺は貴方が好きです」と言っているような言葉に、たまらずに視線を逸らしてしまう。ゆるゆると頬やら耳やらの温度が上がっていっていることは解っていたが、それをとめる術があるわけがない。どこかに穴があるならその中にでも暫く引きこもっていたいね。恥かしさで死にそうだ。
 くそ、この居た堪れなさをどうすりゃいい。とりあえず、何か言え古泉!
 心の中でそんな事を絶叫していると、不意に目の前にあった影が動いた。何事だと古泉のほうを見てみれば、古泉が地面に蹲っていた。その姿は疲労困憊している運動選手のようである。
「……どうしたんだよ、急に。もしかして、さっきまで神人退治に狩り出されてたのか?」
 今更ながら思い当たった可能性に、俺が眉を顰めて問いかけると、古泉は即座に首を左右に振った。
「いえ、違います。その、どうにも信じがたくて……」
 否定だけはきっぱりと、それ以外はもごもごと古泉が言う。本当にお前はとことんマイナス思考すぎていっそ笑えてくるな。まあ勘違いと決め付ける方向から、俺の言い分を信じようという方向に考え出しただけマシか。
「嘘でここまで言えるほど俺は面の皮は厚くないさ」
「ええ、知っています。貴方は人を傷つけるような嘘を言える方ではありません」
 こんな時までどことなく優雅な所作で立ち上がった古泉が、小さく笑みを浮かべる。俺も随分と買い被られたものだな。
「僕は決して過大評価とは思いませんよ」
「そんな事を言っても別に何も出んぞ」
「お世辞ではないんですけどね。……貴方の言葉、本気にして良いんでしょうか? 」
 肩を竦めて返事をした古泉が、不意にマジな顔を作って尋ねてくる。この期に及んで最終確認とは、本当にお前はどれだけ小心者なんだ。
「……確認が一々多い奴だな。さっきからそれで構わんと言っているだろうが。同じ事を二度も言わすな」
 ついと顔を背けて言う。流石に真正面からあの面を見てそういった事を言うのは、少々俺には難易度が高すぎる。行動ならば尚更だ。流石につい最近(具体的に言えば今日の昼間)気付いた感情なので、そこまで思い切る事はまだ出来ん。
 だがそうは思うものの、古泉の様子を見るに、どうやらこいつは言葉だけじゃ信じられないみたいだ。今も頻りに俺の真意を探るような視線を向けてきている。
 本当にお前は厄介な奴だな、古泉。ああもうこうなったらやけくそだ。
 俺はいきなり古泉の襟元へ手を伸ばし、それから思い切り引き寄せた。当然古泉はバランスを崩し、此方に倒れこんでくる。古泉よりも身長の低い俺が引き寄せたために、古泉は若干前かがみ気味になっていた。よし、いまだ!
 目を思い切り瞑り、近づいてきた古泉の唇めがけて自分のそれをぶつける。
「――っ!」
「ってえ!」
 正直、勢いを付けすぎた。見事に歯と歯が正面衝突をかまし、俺と古泉は揃って痛みに悶絶する事になった。じんじんと歯が痛みを訴えてくる。やっぱり慣れない事はするもんじゃないね。
 ……というかこれ、実はセカンドキスだったりするんだが、悔しいので古泉に自己申告するのは止めておくか。どうせこのイケメンは俺よりも恋愛経験値が百倍ぐらいあるだろうからな。腹立たしい。ちなみにファーストキスは、件の去年の夏のアレである。
「とりあえず古泉、これで解っただろ。俺自身でも信じられんが、……どうやら俺は、お前の事が、好き、らしい」
 先に立ち直ったのは俺だった。痛みに体を折る古泉へ、頭の上から言葉を投げかける。古泉の視線は此方へと向いていないのに、それでも視線を泳がせてしまうのは湧き上がってくる恥かしさを少しでも散らすためだ。ほとんど無意味であるが、やらないよりは多少はマシだろう。
「な……っ!」
 不意に、体が傾いた。強い力で片腕を引かれたらしい。普段ならば転びそうになった時は受身ぐらい取れるが、今回は唐突過ぎて体勢を立て直せない。
 こける!
作品名:gambling game 作家名:和泉せん