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折原臨也の純情

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ところ変わって、某池袋で帝人は

「で、財布わたしてくれりゃいいんだって」
「俺たちも犯罪行為がしたいわけじゃなくってさ、ちょーっとカンパしてもらいたいだけなんだって」

カツアゲされていた。
人通りの少ない裏路地に連れ込まれた時点で、こうなることを予想していた帝人の目は陰鬱だった。

(なんで夕方にも関わらずこんな馬鹿が徘徊してるんだ・・・)

こういう輩にはあまり時間は関係ない。
ぞろぞろと人数が多い分、気も大きくなってしまうものだ。
周りを取り囲む同い年程度から5つほどは上だろうという青年たちを眺めて、帝人は口を歪めた。
片手はポケットの中で携帯を握っている。
いざとなれば後輩を使うつもりではあるが、この状況でそんな悠長なことはできそうにもない。

「あーあーそんな反抗的な目ぇしていいのかなぁ」
「てか君ちっちゃいよね。中学生ぐらいか?」
「・・・残念ながら高校生ですよ」
「うっそマジ!?」

一応帝人も変なところで反論してみたものの、ほんの少し程度の時間稼ぎにしかならない。
そもそも時間稼ぎは援軍が来ることが前提に行うものだ。
どうしようか・・と視線を彷徨わせると、その顎を掴まれ固定された。
鼻先に下卑た男の笑い顔が近づく。

「でもなかなか可愛い顔してんじゃん」
「お、何お前男イケる派?」
「初めてだけどさー、こんくらいだったらイケそうじゃね?」
「そういう楽しみ方アリかー?いや、アリかー・・」

男たちの手が意志を持って伸ばされる。
チッと帝人は舌打ちすると、反対の手に握りしめていたボールペンを取り出した瞬間。

「ぐぼぁっ・・・・!!!」
「は!?」

帝人の顎を掴んでいた男が吹っ飛んだ。
軽く地面をバウンドしながら5mは先に転がっていく。
思わず全員でそれを見送っていたが、またもう一人「うわぁっ!」と叫び声が上がる。

「な、なんだてめぇ!!」
「ちょ、っ待って、いま、しゃべるの・・きっつぃ・・・」
「・・・・・・臨也さん?」

訝しげな帝人の前で、ぜぇはぁと肩で息をしながら汗だくになった臨也が、膝に手を当てて呼吸を整える。

「も、少し、カッコよく来るつもりだったん、だけど・・・思った以上に動揺した、っていうか・・・はぁ・・・」
「て、てめぇふざけんな!!」
「やっちまえ!」

息も絶え絶えになっている臨也に、いきり立った男たちが飛びかかる。
臨也はその場にしゃがむと1人に足払いをかけ、反対側の男を隠し持っていたナイフで切りつける。
背後から殴りかかってきたヤツには振り向きざまにストレートをお見舞いすると、残ったヤツらは情けない悲鳴を上げながら路地から飛び出していった。
ふぅと息を吐くと、ぽかんとしたままの帝人に笑いかける。
あまり良い出来の笑みではなかったが、つられるように帝人の目も柔らかく緩んだ。

「無事かい?」
「・・はい、あの・・・ありがとうございました。その、臨也さんが慌ててるとことか、初めて見ました」
「そりゃあね・・・」

臨也は額に浮かんだ汗を軽く拭うと、


「好きな子のピンチに焦らなかったら嘘でしょ」

「・・・・・」
「・・・・・」

死のような沈黙が辺りを覆った。
互いの笑顔が凍りつく。
カラン・・と握ったままだったナイフが臨也の手から滑り落ちた。

「・・・、臨也さ」
「うっ・・・うわぁぁぁっ!!ち、違う!!」

リンゴでもここまで赤くはないだろうと思うほどに、臨也の顔が真っ赤に染まる。
わたわたと意味もなく手を振り回しながら後ずされば、不良をそのまま踏み越えた。
帝人はその様子を呆然と眺めていた。
混乱しているのは同じだ。

「違うんですか?」

混乱してるからこそ、思わずそう呟いた。
問い返した少年の声に臨也はいっそ泣きそうになった。
今までの苦労はなんだったのか。

(違わない。俺は君が好きだ、好きで、好きで愛している。だからフラれないために今まで・・!)

ぐっと唇を噛む臨也の姿に、帝人は呆然としながらも心が高揚しているのがわかった。
7つも年上の、非日常と隣り合わせに生きている、大人の男の人。それが帝人の臨也に対する人物像だった。
そしていつも捉えどころがなく、人を煙に巻くのが得意で、混乱させては高みの見物をするのが趣味・・と思っていたのに、こんな姿は想像したこともなかった。

(今、僕はきっと誰も知らない臨也さんを見てるんだ・・・それって、なんて、なんて・・っ!!)

臨也は目を見張った。
まるで大輪の花がほころぶかのように、帝人は――笑ったのだ。
今まで一度も見たことのない、心からの笑顔。
ふらりとそれに吸い寄せられるように、下がった足をまた帝人の側へと戻す。
ぎゅっと両手の拳を握りしめて緊張にカサつき震える唇を開いた。


「み、帝人君が、好きです!つ・・つ、付き合って、くだ・・さいっ!」


返事が怖くて固く目を閉じる。
強張っていても美しいその顔に、帝人はそっと手を伸ばし頬に触れた。
両手で頬を包み込むようにすると

「はい、いいですよ」

と告げると、臨也が目を開く前に、その唇へ軽く口付けた。
ちなみに臨也がそこで卒倒したのは言うまでもない。

作品名:折原臨也の純情 作家名:ジグ