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折原臨也の純情

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さて、抑えられない好奇心とともに外へ飛び出した帝人は、街を巡って知り合いを探すことに決めた。
池袋は広いが、知り合いの遭遇率はなぜか高い帝人である。

(セルティさんか、門田さんたちか、機嫌が良さそうなら静雄さん、サイモンさんもいるかな?)

ずいぶん慣れた道のりをフラフラと知り合いを求めさまよい歩く。
よくセルティや静雄が他愛もない話をしているいつもの公園に差し掛かった時、ちょうど馬の嘶きのような音が聞こえた。

「セルティさん!」

曲がり角から姿を現した漆黒のライダーに、笑顔で手を振る。
帝人の前で停止したバイクを労うように軽くたたいて、セルティはPDAを取り出した。

『久しぶりだな帝人。元気か?』
「はい元気ですよ、ちょっと数日間変な人に悩まされましたけど・・・」
『変な人!?変質者か!?大丈夫なのか!!??』

壊れるんじゃないかと思うほどに、激しく入力してずずいとPDAが眼前に押し当てられる。
同時にワタワタともう一方の手を上下して焦りと心配を全身で表現してくれる首なしライダーに、帝人は苦笑いを浮かべる。
人外の存在だというのに、このライダーは知り合いに対して人間以上に優しい。

「大丈夫ですよ、臨也さんですから」

ぴたりとセルティは動きをとめると、ぽちぽちと入力して

『逆にダメだろう』
「あ、やっぱりそう思いますか?」
『絶対ダメだ。あいつ何したんだ?いや、言いたくないことなら聞かないが・・・』

気を使うセルティに、うーんと帝人は軽く口をとがらせる。

「言いたくないんじゃないんですけど、ちょっと聞きたいことがありまして」
『なんだ?』

ヘルメットを軽く横に傾けて、人間臭い疑問の姿勢をとる。

「最近臨也さんに会いましたか?なんかすごい機嫌が悪いらしいって情報が流れてまして」
『最近は会ってないな。力になれなくてすまない・・・そんなに機嫌が悪いのか?帝人は関わっているのか?』
「いえ、僕はここしばらく上機嫌の臨也さんしか見てないんです。だからどうしてそんな噂があるのか気になっちゃって」
『あいつのことだから何か企んでるんじゃないか?』

セルティさんもそう思いますか・・と帝人は呟いて首をかしげた。
企み意見がこれで2票である(1票目は当然帝人だ)

「でもなんで僕には上機嫌なんですかね?わざわざ何のための演技なのかなぁ」

返事をしようとセルティがPDAのカーソルに指を当てたところで、これまた知り合いが近づいてくるのが見えた。
トントンと帝人の肩をたたき、帝人の背後から片手をあげて寄ってきた人を指し示す。

「2人して何してんだ?立ち話しか?」

夕陽の沈んだ空にも明るい金髪が眩しい取り立て屋だった。
頭1個分ほど上の視線と目を合わせて、にっこりと帝人は微笑んだ。
探さずに済んだ喜びと、静雄の機嫌の良さそうな様子に対しての笑顔である。

「こんばんは静雄さん。休憩ですか?」
「おう。ちょっとだけだけどな。2人が見えたからよ・・・で、どうしたんだ?」

普段のキレた姿など想像もできないほど穏やかな好青年だ。
どうしたんだ?のところで、帝人の頭を撫でるアクション付きである。
まぁ少々力が強かったのか(帝人が弱いのか)ぐらぐらと頭が首から揺れたのだが。

「それが――」
『臨也が帝人に上機嫌でからんできたらしい』

PDAは静雄の前に差し出されている。
当然帝人はセルティと静雄の間に挟まれている上に、2人の視線の高さとは合わないため、PDAに何が書いているのかは見えなかった。
帝人には文字がわからなかった、が、逆にはっきりと静雄の米神に青筋がピキリと浮かぶ様を目撃してしまった。

(あ、あぁーーー・・・)

と心の中で、こうなったかという思いと、こうなりたくなかったという思いがせめぎ合う。
ただし状況は帝人の思いとは関係なく進んでいくのだが。

「あのノミ蟲が・・・なんだと・・・・・?」

地獄から響くような低音だった。
ちらりとセルティに目を向けると、完全に『あ、やべ』と声が出ない代わりに全身の雰囲気が言っていた。

(もしかしなくても正直に臨也さんの名前出したんですね!?)

じりじりと野生の熊と出会ってしまった時の対処法と同じように、視線を静雄からはずさないままに帝人とセルティは後ずさりを始めた。
静雄の震える右手が、近くにあった公園の外灯を握りしめる。

「・・・・ぃざやぁああぁぁぁぁっ!!!!」
『帝人、ここは任せていけ!』
「ありがとうございますセルティさん!そして静雄さんもさようなら!!」

セルティの男前なセリフとともに、あっけなく折られ引き抜かれた外灯がバトンのように水平に振り回された。
ほのぼの井戸端会議の風景が一気に戦場の様相だ。
帝人なりのダッシュで場を離れ、ちらりと背後を振りかえると、なんとか静雄を収めようとするセルティの姿に少しだけ涙がにじむ気がした。

(やっぱり臨也さんのことを静雄さんに聞くのは、絶対にやめたほうがいいな・・・それにしても臨也さんの名前出しただけでキレるなんて・・)

いざ本人の姿がなくても、そこまで怒り心頭になれるとは、どういう付き合い方をすればそこまで人を嫌うことができるんだろうか。
感情発露の数値が低い帝人には、あまり理解できないことだった。
そもそも帝人は激怒したことなどないのだから、わかりようもないのだが。

作品名:折原臨也の純情 作家名:ジグ