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Snow on Soul ―特別なもの―

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「最近、他の国から流れてきた人たちがいるでしょ?」
「あぁ・・・青の民とか言ってるやつらだろう?」
「・・・肯・・・」
「そいつらがどうかしたのか?」
 できるだけ、不穏な情報は逃さないようにはしてはいるものの、それでも実際に街を見てみると違うということはよくある話だ。そのための観光であり、視察であることをこの二人はよく理解している。数年前のあの事は、双子の妹たちにも思わぬ影響を与えた。それが、今回みせているような観察眼であり、考察力だった。
「まぁ、イザ兄もあの人たちが占いとか呪術っぽいことで生計をたてていることは知っているでしょ?」
「あぁ。知ってるけど?」
 クルリは話をしながらいい温度にぬるくなった紅茶で喉をうるおす。マイルは二人の様子をじっと見てから紅茶へと目を落とす。性格のねじ曲がってしまったといって差し支えないような二人が、からかう様子もなくじっと真剣に言葉を落とすのを、イザヤは胸のざわめきと一緒に聞く。
 青の民と呼ばれるその人たちに、いい思い出がないのを知っているからか、マイルもクルリも、何度も馬車の中で街で見てきたことについて何度も話しあっていた。何をどういう風に言うべきか。実際にみてきた自分たちはどのように思ったのか。言葉を慎重に選ばなければ、あの兄がどう動くかがよくわからない。
 頭の回転が速いことは自分たち家族がよく知っていることではあるが、思わぬところで理性というストッパーが外れてしまいそうになるのは、もう何年も前に経験しているから。あの時のような事を起こしてはいけない、と二人は何度も馬車の中で話しあった。
 あの時のような冷たい美しい微笑をした死に際を見るのも、絶対に言いはしないけれども、大好きな兄が見ていられなくなるような状態になることも、防がなければいけない、と話しあった。あの、生まれたばかりの体温が親を失うことも。
 宿でも話しあい、馬車の中でも話しあい、それで結論として吹雪の中ではあるけれども、急いで帰宅することを二人は選んだのだった。
「・・・その人たちの占いがね、めちゃくちゃ流行ってたんだけど・・・やっぱり、危ないことを言う人が何人かいて、ね。あいつは悪魔の使いだとかなんだとか・・・」
 その言葉に、ぴく、と反応したイザヤの様子に、クルリもマイルも心臓がばくばくと動く。もしかしたら、この兄は青の民を弾圧するかもしれない。迫害するかもしれない。それが、一番恐ろしい。弾圧というのは、迫害というのは、実際の何か罪を犯して断罪するのとはわけが違う。罪も何もないひとたちが、ただ、似ている、というだけで大勢殺されるのだ。
 それは、ヴァンパイアだって例外ではない。今では各地に散っているヴァンパイアも、かつては人間から弾圧され、迫害された過去を持っている。その中で、自分たちは敵ではない、と必死に訴え、どうにか認められた者たちの子孫が、今生き残っている者たちだ。
 その弾圧と迫害の記憶は、体内に流れる血に記憶として刻まれている。クルリもマイルも、そしてイザヤも例外なく、その経験したこともない記憶のフラッシュバックに苦しまされたことがある。それでも人間たちと一緒に暮らしていけたのは、生き残るようなきっかけをくれるような温かな人間たちがいたからだ。
 色んな性質の者がいる。
 それは、人間も、ヴァンパイアも変わらない。
 それを、いっしょくたに弾圧し、迫害することになるのではないか。あの美しい街が、血に染まってしまうのではないか。クルリもマイルも、それが怖い。
 それが、恐ろしい。