ロリポップ・キャンディ
まだ與儀の無茶な講釈が続くかと身構えていたが、それ以上は言葉が続けられなかったので、俺はスパッとそう言ってみせた。
すると彼の目は見る間に涙に滲んで、わっと机に泣き伏した。
「花礫くん冷たいぃいいいい」
冷たくはない。話に最後まで付き合ってやっただけで上等だろう、と思う。
大体この程度にあしらわれただけで俺を冷たいと言うのならば、初めから俺を好きだなどと言わなければ良い。だって俺はきっと誰かを『好き』になることなどないのだろうし、それならばこのやりとり自体がひどい茶番だ。
「お前なんで俺のこと好きなんて言う訳?」
純粋に疑問だ。俺は彼にやさしくしてやった覚えなどないし、普通に接していても冷たいと泣かれる。
認めがたい事実だが、俺は彼のことが決して嫌いではない。それでも今更この態度が変えられる訳もないし、恋人になって、という意味で彼の感情に応じてやる気もない。
「なんで、って、それは好きだからだよ。放っておけないんだ花礫くんのこと。
いつも傍にいたいって思うし、危ないことからは守ってあげたいって思う。それって好きってことデショ?」
作品名:ロリポップ・キャンディ 作家名:宙(評価の為、晒し中)