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恋が素敵だなんて誰が言ったんだ2

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膝の上の拳を無意識に握り締める。
とんでもない状況になった。
ベンチには俺とセルティとあいつの3人がかけている。
未来永劫、本人どころかきっと誰にも言うことはないだろう片思いの相手がすぐ傍にいる。
下手なボロは出せない。何を言ったらいいのか。
・・・やべえ。頭が真っ白で何も出てこねえ。

空白の意識の中ほとんど自動的にポケットからタバコを取り出し、1本引き抜くと箱を叩く。
と、その動作に隣の2人がこちらを見ていることに気づいた。
俺の手元をじっと見ている。

「・・・あぁ、タバコ・・・まずいか?」
「いえ・・・そうじゃなくて」
『そのトントンだ』

2人の呼吸は妙にぴったりだった。

「・・・これか?」

今しがたの、箱にタバコをトントン叩く仕草を繰り返す。
2人が同時に頷く(セルティのは頷いたような動作だ)

「それって何なのかなあ・・・って、前に2人で話してて」
『おまじないみたいなもんじゃないかと』
「おいしくな~れ、みたいな」
「・・・・・・。」

・・・・・・おまじない・・・・・おいしくな~れ、って・・・・・・・・・。

「・・・ぶっ」

耐え切れずに噴きだす。
お前らの目には、俺がおいしくなるようにおまじないをしてるように見えてたのか。

「な、なんだそりゃ・・・っ」

くつくつと肩を震わせて笑う俺に、隣の2人は肩を落とした。

「あれ・・・何か違うみたいですよ、セルティさん・・・」
『おかしいな・・・毎回やるからてっきりそうかと・・・』
「・・っつうか俺が、んな事する奴に見えるのかよ」

笑いがまだ収まらず語尾が震える。平和すぎるだろそんなん。
予備のライターを取り出し指先のタバコに火を着けた。

『見えるぞ』
「見えます・・・」

その答えに、俺の笑みは更に深くなった。

(・・・あー。・・・何か・・・こいつらといると、なごむ、な・・・・・。)

紫煙を吐き出す。味わうタバコの煙が甘かった。