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恋が素敵だなんて誰が言ったんだ2

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タバコを箱へ叩くのは中の葉を詰めていること。
実際吸うとタバコはスカスカなので詰めた方がいいこと。その仕草は繰り返すうちに癖になっていること。
聞かれるままにつらつらと答える。
隣の2人は喫煙に縁がないせいか、へえへえを繰り返していた。
そこにセルティの携帯が鳴った。

『運んでくる』
「おう、気をつけてな」
「いってらっしゃい」

立ち上がったセルティの持つ荷物から、ふいに嫌な気配がした。
ただの何の変哲もない紙袋だ。だが、・・・・・匂いがした。

「・・・・・。」

・・・・・ノミ蟲野郎だ。
口の中のタバコを噛み切った。



「・・・じゃあ、僕も帰ります」

会話の無くなったベンチに、いたたまれなくなったのかあいつが立ち上がる。
こっちも一緒に立つと軽い会釈をされ、通り過ぎかけた小さな肩に声をかけた。

「・・・・・ノミ蟲の荷物なのか」

声に険が混じっている。俺はこいつとノミ蟲野郎との関係は知らない。
俺より仲が良いのだろうという事くらいしか。

「・・・・・あ、その」

俺と臨也の仲が激烈に悪いことを知っているせいか、声が震えていた。
目を逸らされ困惑した表情すら隠され、先ほどまでの淡い距離感は霧散する。

「あのノミ蟲はやめとけ。利用されるだけされてボロ雑巾みたいに捨てられるぞ」

咄嗟に発した言葉はまるで相手にされない男が嫉妬に狂って言う台詞のようで、気づいて愕然とした。
しかしそうは受け取らなかったこいつは、人の良さそうな顔で首を振る。

「・・・臨也さんはたまにバイトを紹介してくれるんです。
僕は1人暮らしなのでこういうバイトすごく助かるんです。
あの、でも、心配してくれてありがとうございます・・・」

いかにも騙しやすそうな笑顔でそんな事を言われ、余計心配になった。
まだ池袋という都会に染まっていない純朴さだ。
優しげな笑顔は人ごみなんかよりも背後の公園の緑の方がよく馴染む。
一瞬こいつを連れて池袋駅へ駆け込み、そのままどこか田舎へ連れて去ってしまいたい衝動に駆られた。
そうして2人で暮らすことができたら。きっと楽しいに決まってる。

・・・・・・。
刹那よぎった自分の願望に、本格的に末期なことを自覚する。
連れ去りたいとか、やばくねえかこれもう・・・・・。
眩暈がしそうな状態の俺に気づかず、長々と臨也をかばうような言い訳をされた。

「バイトはダラーズの掲示板に掲載されて、その、見てるのは僕だけじゃないです。
僕宛だと思いますけど。証拠のログも残ってるし、だから、本当にやばいバイトじゃないと・・・」
「・・・あぁ?!」
「す、すみませ・・・っ」

機嫌が一気に降下する。よりにもよって俺の前でノミ蟲の話してんじゃねえよ。
お前と臨也の関係がどんなのか知らねえがなあ。
震え上がって鞄のベルトを握るその姿さえ庇護欲を誘うのに、可愛さ余って憎さ百倍だ。
本当はもう帰りたいのだろう。
腰が引けつつも苛々する俺をなだめようとしたのか、か細い声をかけてくる。

「あ、あ、あの、その、ダラーズに入ってるんですよね?」
「あ?まあ、・・・まあな、誘われて入っただけだがよ」
「ぼ、僕もダラーズなんです」
「?」

一瞬何を言われたのか頭に入らなかった。
集会にいたんだ、んなこた知ってる。
いや、正直に言えば内容よりも、その照れ笑いした表情に目が釘付けになっていたせいだろう。

「嬉しかったです。『平和島静雄』と、つながれたみたいで」
「・・・・・・・・。」

思わず黙り込む。そいつはぺこりと頭を下げ帰って行った。
小さな背中をみっともねえと分かりつつも食い入るように見つめる。



お前が。
お前でもそう思うのか。
そんな日常の権化みたいな、平和に、幸せそうに生きてるお前が。
俺が欲しくて欲しくてたまらない物を全て持ってるお前でも。

(1人になりたいと思うくせに)

・・・・・・・・俺みたいな事を、思ったりすんのか。

(誰かとつながっていたい)


心臓が軋むような音を立てた。


(・・・・・・・・・・・・・・・・・俺だって、お前と)



人ごみに消える背を完全に見えなくなるまで追い続ける。
胸の奥で苦しみのた打ちまわる恋心を必死で抑え付けた。
そうでもしなきゃ後先考えず喚き散らしそうだった。
うつむいたと同時に、最後の言葉がフラッシュバックする。


(・・・・・『平和島静雄』と、つながれたみたいで・・・・・)


「・・・・・・・ッッ!!!」

心拍数が上がる。
体中がカッと燃えるように熱くなり、立ち止まっていられなかった。

「くそ・・・!!!」

大股であいつとは逆方向に歩き出す。
もし間違って会ってしまったら死んでしまう。
それに誰に指摘されずとも、今自分の顔が笑えるほど赤くなっているのは分かっていた。