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こころのむこうがわ2

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そして2ヶ月がたったころ、さすがに体育のような激しい運動はまだ無理だが、帝人は復学できるまでに体調が回復した。
学校側には、帝人が行方不明たっだ頃からの欠席を休学という形で処理してもらい、何とか再び通うことが出来るようになった。

正臣は安堵していた。
変わり果てた帝人を見つけ、自身も死の淵を彷徨ったときは、絶望で目の前が真っ暗になったが、
セルティ、新羅の尽力のおかげで、帝人を再び取り戻すことができ、再び共に学校生活を送れるまでになった。
戻ってきた当初の帝人に面会したとき、以前より更に憔悴した状態と、首筋の傷を見たときにはひどい衝撃を受けたが、
体調の回復と共に、昔と同じように話をし、微笑んでくれるようになった帝人に、正臣は心底安堵した。
「心配かけてごめんね、正臣…。もう、大丈夫だから。」
そう言って、困ったように笑う帝人に、正臣も誰も、臨也に連れ去られていた期間何があったのかは、聞けなかった。
帝人も、自分から話そうとはしなかったから、まるで腫れ物に触るのを避けているような、小さな不自然さを抱えつつも、穏やかに日々は過ぎていった。

面白くない冗談を言う正臣に突っ込みを入れて、やたらと大げさに衝撃を受ける正臣を呆れた目で見ながらも、杏里と和やかにお弁当を食べたあと。
それぞれ用事があるとのことで、二人が去っていった屋上で、帝人はぼんやりと空を仰いだ。
現実感がなかった。
あの、悪い夢のような日々が終わり、こんな穏やかな生活を再び取り戻すことが出来るなんて、思っていなかった。
これは都合のいい夢で、目が覚めたら、また、あの暗い部屋に戻っているのではないか。
あの部屋とのあまりの落差に、こちらが夢なのではないかという気さえしていた。
帝人は、今自分がとても幸せなのだろうと思った。
正臣の思いつきに呆れながらも付き合い、園原さんの可愛さに心を和ませ、退屈な授業を受ける。
一度無くした、もう二度と戻らないと思っていた、平和な、平穏な日々。
失うまで分からなかった、かけがえのない、大切な日常。
こんな日々がずっと続けばいい、そう心から思った。
なのに、帝人の脳裏に、折に触れて蘇り、頭から消えない影があった。
忘れるべきだ、そう思うのに、その影は、時をおかずふと現れては、帝人の心を苛んだ。
やがて帝人は、目を閉じて、そっとその名を口にした。
「-------いざやさん…」


作品名:こころのむこうがわ2 作家名:てん